タレントマネジメントはどうすれば成功する? 有名企業の導入事例4つを紹介

タレントマネジメントとは、優秀な人材を「タレント」とみなし、育成や登用を通じ戦略的に育成していく手法です。

このタレントマネジメントは、ソニーやトヨタなどの名だたる大企業が導入しています。

しかし、タレントマネジメントの導入は一般的に、難易度が高く、失敗してしまうこともあります。タレントマネジメントの導入に失敗しないためには、成功事例を理解し、その導入のポイントを参考にすることが有効です。

そこでこの記事では、ソニーや楽天、KDDIなど、有名企業の導入事例を紹介します。また、タレントマネジメント導入の失敗を避けるための方法についても解説します。

これを読めば、タレントマネジメントの導入成功の秘訣がわかりますよ。

タレントマネジメント導入事例① 楽天~会社の成長に伴いタレントマネジメントを導入~

インターネット関連のサービスを提供する楽天グループでは、2012年秋ごろからタレントマネジメントの実現に向けた取り組みを開始しました。取り組みの背景としては、会社の成長がありました。会社が大きく成長を遂げていく中で、これまでの人事のあり方や運営方法では立ち行かなくなっていたのです。

かつての楽天は、事業ごとに必要な人員をその都度補っていくような中途採用が主流でした。しかし会社が成長するにつれて、2007年ごろから本社で新卒採用を増やしていったのです。そのため、新卒者の割合は年々増加していました。

そして、新卒者の割合が増える上で、より全社的かつ長期的な視点で人材育成を行っていく必要性が高まっていったのです。このことが、楽天がタレントマネジメントに取り組むきっかけとなりました。

楽天のタレントマネジメントにおける具体的な取り組みとしては、評価制度の刷新が挙げられます。 かつてはパフォーマンスとプロセスをまとめて評価していましたが、2012年秋からはパフォーマンスとコンピテンシー(好業績者の行動特性)に分けて評価するように変更したのです。

また、人事部が評価者となるグループマネージャと一人ひとり面談し、グループマネージャが部下一人ひとりの強み、弱み、今後の人材開発計画について話を聞いたそうです。この面談は、コンピテンシーの評価の定着を主目的に、1年間にわたり、300人のグループマネージャを対象に実施されました。

楽天の事例からは、タレントマネジメントを導入する上で、特に最初の段階で丁寧にマネージャの意識をそろえることが重要であることがわかります。

【参考】Vol.2 パフォーマンスとコンピテンシーの2軸による新評価制度を導入し、評価を起点に全社員の成長をサポート | HRプロ

また2018年には、楽天はグローバル全体で人事データ基盤を統一しました。それにあわせて、楽天の担当者であるグループ人事部の黒田氏は、タレントマネジメントの難しさについても言及しています。

楽天ではアメリカ発のシステムを導入し、業務を全世界で共通化、標準化するために「運用にシステムを合わせるのではなく、システムに運用を合わせる」判断を行いました。本来であればこのシステムを使い、タレントマネジメントも実現できるはずですが、そのためには日本の従来的な習慣を変える必要性に直面しています。

楽天の選んだシステムの開発地であるアメリカでは、求人において職務を明確化し、その職務を担えるスキルを持った人材を雇用するという「ジョブ型雇用」が主流です。一方の日本は、ひとまず人を雇い、その後に部署や職務を振り分ける「メンバーシップ型」の雇用慣行を取ることが一般的です。

【関連】ジョブ型とメンバーシップ型を徹底比較!ハイブリッドの雇用形態「ロール型」も紹介します | ヒョーカラボ

このような雇用慣行の違いがある中で、新しく導入した人事システムを元にタレントマネジメントを実現することがかなり難しいことがわかりました。

このような状況下で、社員からの理解を得ながら、全世界共通的な人事制度の再構築に挑戦しています。

【参考】データ統合に求められるチェンジマネジメントの視点 | JDIR

タレントマネジメント導入事例② KDDI~社員力の向上を目指しタレントマネジメントを導入~

KDDI株式会社は、「au」のサービスブランド名で携帯電話事業を手掛けている大手通信会社です。KDDIは、2017年3月期から2019年3月期までの3年間に「ライフデザイン企業への変革」という中期目標を掲げました。そのために「社員力の向上」を最重要課題のひとつとして設定し、その実現のためにタレントマネジメントの導入をはじめました。

人財価値の最大化や適材適所の実現を目的とし、採用・育成・活用・登用を戦略的に行う「タレントマネジメントプロセス」を構築。2021年4月にはKDDIプロパー全社員に該当する約1万7000名を対象に新たなタレントマネジメントシステムを導入しました。

日本IBMが構想策定に関するコンサルティングからシステム構築までを行い、SAPジャパンはクラウド人事ソフトウェアシステムの提供を行っています。これにより、KDDIはツールを使った効率的なタレントマネジメントの実現を目指しています。

【参考】KDDIのCSR重要課題: 多様な人財の育成による活力ある企業の実現 | ESG (環境・社会・ガバナンス) | KDDI株式会社

KDDIがジョブ型人事制度に向けタレントマネジメントシステムを刷新―日本IBMとSAPジャパン:HRzine

タレントマネジメント導入事例③ 東京電設サービス(東京電力グループ企業)~アセスメントを元にした人材育成プログラムを提供~

東京電力のグループ企業で、設備工事業を営む東京電設サービス株式会社も、タレントマネジメントを導入しています。

導入の背景には、提供するサービスの多様化があります。東京電設サービスはもともと送変電設備の保守・点検業務などを行う会社でしたが、オフィスビルや工場などのメンテナンスや、施工管理業務も行うようになり、そのような様々な業務が担える人材を育成していく必要があったのです。

また、当初の評価制度が現場技術者としての評価に偏っていたため、将来のマネジメント層を育成していく仕組みもありませんでした。

そのため、最初はタレントマネジメントシステムにより、社内の人材の持つスキルやコンピテンシーを可視化。また、アセスメント結果を社員に公開し、自身の能力開発や部下の人材育成に活用できるようにしました。

集まったデータを元に、社内に足りない人材を明確化し、全社員の傾向を元に今後目指すべき人材像を定めるなど、人事領域での意思決定に活用しています。

またデータを元にした人材育成プログラムを管理職に提供しています。このプログラムを通じ、部下がスペシャリスト型かマネジメント型かを見極めた上で、それぞれにあったキャリア開発を可能にしています。

【参考】
人材育成の枠組みを一新。東京電設サービスの人材可視化プロジェクト。 | SHLタレントマネジメントソリューション

タレントマネジメント導入事例④ ソニーグループ~いち早く「レバレッジ・タレント」を導入~

ソニーグループは、日本においても早くからタレントマネジメントに取り組んできた企業です。ソニーは2008年前後から優秀な人材(タレント)を、研修と配属を通じ育成していく「レバレッジ・タレント」という仕組みを構築するなど、いち早くタレントマネジメントという考えを人材育成に取り入れてきました。

経営層に関しては、長くて半年も続くカリフォルニア大学ロサンゼルス校での研修のあと、人材の能力をさらに伸ばすような仕事やポジションに配属していきます。またミドル層に関しては、世界7ヶ所にいる「タレント・ダイレクター」が各地の優れた人材と、その人材にふさわしいポジションについて情報交換を行い、人材育成につながる配置転換や異動を促進しています。

【参考】Vol.12 岸本 治氏 ソニー|2020の人事シナリオ|リクルートワークス研究所

タレントマネジメント導入の失敗を避けるには、「スキルマップ」でのスモールスタートが有効

この記事では、有名企業におけるタレントマネジメントの導入事例について解説しました。

タレントマネジメントを導入する上では、社員一人ひとりにしっかりと制度や考え方を理解してもらうことが重要です。楽天の事例では、マネージャとの面談に1年間を費やしていました。このように、タレントマネジメントを実現するには、多大な努力とコストを覚悟した方が良いでしょう。

またタレントマネジメント導入が失敗する理由としては、その背景に「タレントがいない」問題や、「非タレント」とされた人のモチベーションの低下などがあります。そのため、タレントマネジメントをスモールスタートさせながら少しずつ人材を育てていくような取り組みが重要です。

タレントマネジメントをスモールスタートさせるには、スキルマップの活用がおすすめです。

スキルマップは人材のスキルを一元化して表示したもので、タレントマネジメントほど大掛かりでなく導入でき、人材の育成や登用、配置に活用できるメリットがあります。

これからタレントマネジメントの導入を考えている方は、あわせてスキルマップの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

【関連】人事担当者に知って欲しい!スキルマップを評価基準に取り入れるメリット | ヒョーカラボ