1on1ミーティングとは?概要や注目される背景、導入事例まで解説

昨今では、新たなマネジメント方法のひとつとして「1on1ミーティング」が注目されています。大手企業をはじめ多くの企業で導入および成功事例があり、今後も導入企業が増えていくと推測されます。新型コロナウイルスの影響を踏まえ、人材マネジメントへの投資が結果として企業成長につながることでしょう。

その一方で、なかなか効果的な運用に至っていないという声も少なくありません。今回は、1on1の概要や注目されている背景をはじめ、制度内容や導入事例まで解説していきます。

1on1ミーティングとは?

ここでは、1on1ミーティングの概要や注目されている背景などについて解説していきます。

1on1ミーティングの概要

1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に時間をつくり、1対1で話し合いの場を設けることです。多くの場合、これまでに実施されてきた個人面談をイメージする人が少なくないでしょう。

1on1ミーティングは、従来のような目標設定や人事考課など、上司からのフィードバックではありません。目標に関する進捗具合やフォロー、通常の業務に関する課題・悩み、メンタルヘルスやワークライフバランスなど、そのテーマは多岐に渡ります。

1on1ミーティングが注目されている背景

従来は上司からトップダウンの指示で済んでいた問題も、組織が拡大するとどうしても目が届かない課題が出てきます。そのため今組織に求められるのは部下の能動性や主体性を引き出すことです。しかし日頃の人間関係によるしがらみから、上司と部下が対等な関係で対話するコミュニケーションを図れているという企業は少ないのではないでしょうか?

現在国内では年々労働人口が減少しており、旧来のように人材採用は買い手市場ではありません。このような理由から、従業員がモチベーションを維持・アップしながら自社で働き続けられる環境づくりが不可欠です。

1on1ミーティングを導入することは、上司と部下の双方が1on1というコミュニケーションを通し、主体的で能動的なビジネスパーソンとしての成長が期待できます。

1on1ミーティングと人事評価面談との違い

1on1ミーティングと人事評価面談は、似ているようで非なるものです。成果や実績を評価する、上司から部下へアドバイスする、というのが人事評価面談であるならば、1on1は、双方の対話が中心で、しかも主体になるのは部下にあたります。人事評価面談は一方的なコミュニケーションになりがちな一方、1on1は双方である点が大きな違いです。

また実施頻度や時間についても、人事評価面談は四半期ごとで一人当たり15~30分程度など、比較的実施する間隔が長く、時間も短めです。一方で1on1ミーティングでは、時間は30分程度でありながら、実施頻度は週1回、週1回、月に1回など、比較的短いスパンで行われます。

目的についても、人事評価面談は主に人事考課が中心であり、その内容は目標設定・進捗具合の報告・達成度およびアドバイスなどです。1on1ミーティングでは、自由な対話からの信頼性構築が目的であり、対話内容は重要課題だけはなくそのときに上司に話したいこと・相談したいことを中心に話し合います。

1on1ミーティングとメンター制度との違い

メンター制度とは、若手社員など(メンティー)に先輩社員や管理職など(メンター)がつき、指導や成長へのサポートをすることです。多くの場合、メンターには別部署の人がつきます。

コミュニケーションの頻度などはそれぞれで異なり、週に1回という企業もあれば、なかには半期に1回という頻度のケースもあります。また、メンティー1人に複数のメンターがつくケースなどもあります。

一方で、1on1ミーティングは基本的に1対1のコミュニケーションです。頻度の点においても1on1ミーティングのほうが多く実施される傾向にあります。

1on1ミーティングを導入する目的と必要性

ここで、1on1ミーティングを導入する目的や必要性について見ていきましょう。

上司と部下とのコミュニケーション量減少を抑制

近年、労働力人口の減少に伴い、多くの企業で人材不足に陥っています。管理職であってもその多くがプレイングマネージャーであり、ほとんどの従業員が実務に注力しているわけです。

そんななか、上司と部下だけに限らず、社員同士のコミュニケーション量・頻度が減り続けている企業は少なくありません。これまでにあったような、残業の合間のちょっとした雑談、終業後の飲み会などの機会も少なくなってきています。たとえコミュニケーションを取れる場があったとしても、必要な業務に対する話に終始してしまうケースも多いです。

こうしたなか、上司と部下のコミュニケーション量を意図的に増やし、円滑な人間関係の構築を目的に1on1ミーティングを実施するケースがあります。

行動や思考の言語化

たとえばお客様と従業員との間で些細なできごとが起こったとします。それが「いいこと」なのか「悪いこと・怒られていること」なのかの判断は、部下自身のなかにある物差しで判断しています。

部下自身は「いいこと」と判断していても、上司が客観的に見た場合「怒られていること」のケースもあり得ます。1on1ミーティングでは、ちょっとしたできごとや思想についてともに振り返り、言語化していきます。

上司に直接言われて行動を変えるのではなく、部下が自分自身で振り返りつつ、自分で気づいて成長していく過程が非常に重要です。こうした部下の内発的な気づきの機会を得るため、上司が1on1ミーティングを通してサポートしていきます。

感情のマネジメント

行動や思考に関するマネジメントも重要ですが、これからの時代には感情のマネジメントも必要になってくるでしょう。たとえば、近年は多くのジャンルにおいて飽和状態にあります。ユーザーに選ばれるにはどうしたらいいか「マーケティング」の分野においても、ユーザーの「感情」を掴むことが重要視されています。

価値観の多様化に伴い、タスク管理などの行動面、ロジカルシンキングなどの思考面にプラス「嬉しい」「楽しい」などの感情面をマネジメントすることも重要です。特に若年層の場合、仕事に対して感情面を大切にする傾向も見られます。何でも話せて、風通しの良い人間関係のなかでモチベーションを維持しながら働くには、1on1ミーティングが非常に大切な場となり得るのです。

1on1ミーティングの導入によって得られるメリット

企業が1on1ミーティングを導入することは、さまざまなメリットがあります。ここで大きく6つのポイントにわけて解説します。

社員個人の育成・成長

1on1ミーティングは、部下自身の気づきによって成長していくきっかけにつながります。社員個々人が、単純に目の前にある業務をこなすのではなく、どういった点に課題があり、どこを改善すればさらなる成長を見込めるのか、自分で内省しながらクリアしていけます。

部下が自分の行動や考えについて一旦振り返り、上司と対話しながら自分の強み・弱みを理解していきます。具体的に必要なことを自分で判断することにより、成長および力の定着につながるのです。

部下と上司との信頼関係がより深まる

特に企業では、複数の従業員がチームとなり、ひとつのプロジェクトを担っているケースも少なくありません。こうしたなかで人間関係が希薄だった場合、ひとつの方向を向いてプロジェクトを成功に導くのは難しいことではないでしょうか。

人間関係の多くは、双方が信頼する気持ちによって成り立っています。お互いの信頼があってこそ、スムーズな業務遂行、大きな成果へとつながる可能性が高まるのです。そのためにも、定期的に個人で対話する1on1ミーティングの機会が功を奏します。

1on1ミーティングで話すテーマは、業務のことでも構いませんし、プライベートのこと(家族・好きなスポーツ・最近気になったニュースなど)でも構いません。ざっくばらんに話せる「定期的なコミュニケーションの場」を設けることで、信頼関係の深まりも期待できます。

部下の仕事に対するモチベーションアップ

上司が部下に対して公平に時間をつくり対話することで、各従業員が部署内で不公平感を持つことも少なくなるのではないでしょうか。さらに「上司が自分を見てくれている・評価してくれている」と感じることで、部下が仕事に対して意欲を持って取り組むことにもつながります。

それぞれが公平感を持つことから、チーム全体の仕事に対する意識も高まります。ただ仕事をこなすのではなく、それぞれがモチベーション高く好循環につながるはずです。

現場をよりリアルに把握できる

こまめなコミュニケーションの機会があることで、上司自身が、現場でリアルに起こっている事象を把握しやすくなります。問題点があれば早めに解決へ導くサポートができますし、部下自身が今やるべきことに気づくきっかけにもなるはずです。

また問題点だけでなく、通常業務や設定した目標に対する進捗状況の把握もできます。四半期や半期ごとでは、効率のよい必要なアドバイス・方向転換は難しいものです。しかし1on1ミーティングで隔週や月1回などこまめなコミュニケーションをとることで、必要なタイミングで状況把握、進捗確認も容易になります。

業務の効率化

1on1ミーティングの実施によって効率よく仕事が回り、結果として全体的なパフォーマンス向上にも一役買います。その理由には、円滑な人間関係・信頼関係はもちろんのこと、上司が部下自身のあらゆる状況をよく把握できていることも影響しています。

たとえば1on1ミーティングでメンタルチェックなどをテーマにしておけば、部下それぞれの現在の体調面を把握しやすくなります。必要に応じてプロジェクト・業務内容の変更なども検討しつつ、業務の効率を図ることも可能です。

貴重な人材流出の抑制

人間関係を良好なものにしておくことで、風通しの良い職場環境につながります。上司と部下が円滑なコミュニケーションをとれていないと、部下がどんなことで悩んでいるのか、将来どんなキャリアを目指しているのかなども、よくわからなくなる可能性も否めません。

こうした閉塞的な環境が続けば、上司が気づかぬうちに部下が新たな職場を探し、転職していくケースが出てくるかもしれません。近年はどの企業でも深刻な人材不足であり、企業にとって従業員は大変貴重な存在です。

1on1ミーティングの導入によって円滑な人間関係・信頼関係を築いていくことで、こうした大切な人材が流出することの抑制にもつながります。

実際に1on1ミーティングを実施するうえでの注意点


1on1ミーティングは「上司と部下の対話」というシンプルな構図でありながら、やり方を間違えるとなかなか思ったような成果をあげることができません。ここでは、1on1ミーティングを実施するうえで注意したい3つのポイントについてご紹介します。

傾聴

1on1ミーティングで注意したいのが、上司から部下に対する一方的な話し合いになってしまうことです。上司からの一方的なコミュニケーションでは、部下自身の内発的な気づきの機会を失ってしまいます。

そこで重要なのが、傾聴の姿勢です。相手の言葉を繰り返す、相手が話した内容についてまとめる、相手の言葉を否定するのではなく受け入れるなど、方法は非常にシンプルなものです。

1on1ミーティングで重要なのは、部下自身が自分の行動について理解して成長していくことにあります。そのためには、上司の導きによって部下自身が考えて次の行動を選択するなど、気づきを引き出すことがポイントです。

コーチング

1on1ミーティングでは、上司側に必要なスキルも数多くあります。そのなかのひとつがコーチングスキルです。ビジネスシーンにおけるコーチングは、部下と上司の間での対話・傾聴などを通じ、上司が部下の目標達成や自己成長へと導くことです。

コーチングによって上司が必要なテーマについて深掘りし、部下が自分で考え、自発的に解決方法を見出す力を養えます。また、部下自身が気づいていない潜在力を引き出すきっかけにもなります。

継続性

1on1ミーティングがなかなかうまくいかないと悩んでいる企業も少なくありません。その背景には、1on1ミーティングの効果にはあまり即効性がないことにあります。1on1ミーティングは早期の効果が見えにくく、あまり成果がないとすぐにやめてしまったり、実施頻度が少なくなってしまったりするケースが多いのです。

その結果、さらに1on1ミーティングの効果は薄くなり、実施自体をやめてしまうという場合もあります。最終的には、上司側の負担の大きさなども相まって、1on1ミーティングに対するデメリット面しか見えなくなってしまいます。

1on1ミーティングを導入したら、必ず定期的に継続して実施していくことが成功への近道です。

1on1ミーティングを実施する際に部下・上司双方が心がけておきたいこと

1on1ミーティングを実施する際、上司側だけが傾聴やコーチングなど必要なことを心がけておくだけではうまくいきません。ここでは上司・部下ともに、1on1ミーティングを実施する際に心がけておきたいことをご紹介していきます。

部下が心がけておきたいこと

部下が心がけておきたいことは、主に以下の通りです。

  • 事前にテーマを念頭に入れておく
  • 自らが主体となって話を進めていく
  • 短期ではなく中長期的な視野で考えていく

1on1ミーティングの主体は部下にあります。テーマについては自らが選定し、極力事前にテーマの共有・合意を得ておきましょう。それが難しい場合は、対話をはじめる直前にテーマ内容のすり合わせを行います。

ミーティングの中心は部下自身です。無意識に上司のリードを頼ろうとして、受け身のままでは効果的な対話になりません。失敗してしまえば、その時間は意味のないものになってしまうため、自己成長のために積極的に話を進めていくことが大切です。万が一うまく進められない、慣れていない場合には、上司へ前向きにサポートを依頼してみましょう。

テーマや話す内容は、短期で完結するようなものではなく、できれば中長期的な視野で解決・成長していけるように考えていきます。目先の短期的なノルマや目標ばかりに目を向けず、1年後、2年後など、将来的に自分がどうなりたいかをイメージして必要なやるべきことを考えていくことがポイントです。

上司が心がけておきたいこと

上司が心がけておきたいことは、主に以下の通りです。

  • 事前にテーマを把握し、考えておく
  • スケジュールを入れておき、リスケジュールする必要のないように
  • 自分が答えを出す・指示するような形にはしない
  • 定めた時間きっちりに終わるよう
  • 話しやすい雰囲気をつくるよう心がける

1on1ミーティングで主体となるのは部下本人です。ただし、その場で当日のテーマをいきなり聞くのでは効果的な対話が成立しません。1on1ミーティング実施前に、あらかじめ当日のテーマについて確認・合意しておくことが大切です。

また、スケジュールについても必ず実施する方向で調整しておきます。先述したように1on1ミーティングでは定期的・継続的に実施することが効果を実感する近道です。リスケジュールすることのないよう、極力事前調整した日程で実施します。

進め方についても、上司自らが答えを出したり上から指示を出すような形で進めないことです。あくまでも部下が自ら進めていくことを重視します。時間は30分など、あらかじめ決めておいた時間を延長することなく、すっきりと終了することです。長々と延長してしまうと、その日のスケジュールが乱れてしまい、1on1ミーティングに対する心象も悪くなる恐れがあります。

最後に、上司自身も積極的に話しやすい雰囲気をつくるよう心がけましょう。

他社の1on1ミーティング導入事例

ここで、1on1の導入事例で成果が上がっている3社の事例をご紹介します。大手企業をはじめ、導入企業も増えているため、是非参考にしながら1on1ミーティングの導入を検討してみてください。

ヤフー株式会社

ヤフーは2012年から1on1ミーティングを導入しており、国内でも比較的早期から積極的に取り組んでいることで知られます。ヤフーは1996年設立。2019年時点で社員約7,000人のうち9割において、1on1ミーティングを実施しています。

2012年に掲げた「爆速経営」において100を超える人事改革を実施。そのなかのひとつが1on1ミーティングです。今では企業文化のひとつともされ、経験学習をコンセプトとして考えられています。

ヤフーでは全マネージャーにコーチング研修を実施し、継続的なサーベイも実施。アンケートの結果、スコアが高いマネージャーを「社内コーチ」として認定します。スコアが低いマネージャーは認定コーチの指導、再研修してもらうなど、企業としてのバックアップも徹底しています。

ヤフーではplan・do・checkを1~2週間程度で回せるように動いています。継続的に1on1ミーティングを実施することで、効果的な人財開発が実現しているのです。

クックパッド株式会社

料理レシピのWEBサイトとして知られるクックパッドでも、1on1ミーティングを導入しています。スタッフは少人数でエンジニアであり、個人での活動が多い傾向にありました。チームでの活動で効果的な成果をあげるべく、社員それぞれの声を聞くため1on1ミーティングの導入に至りました。

クックパッドの1on1ミーティングで特徴的なのが、1週間で15分と短時間で高頻度という点です。エンジニアは業務の遂行に集中して時間を使うため、比較的早い段階で問題解決を目指すために、こうしたタイミングでスケジュール設定されています。

また、テーマにする内容はざっくばらんで自由度が高いのも特徴のひとつです。早期での問題解決のきっかけをつくることが目的であり、プライベートな内容なども盛り込みながら自由に話し、終わったらそのままランチなどに出かけるなど、ラフな雰囲気で実施されています。

1on1ミーティングの場を「進捗確認の場にしない」という理由から、具体的な目標を設定していないのも大きな特徴のひとつです。

グリー株式会社

グリーでは、従業員一人ひとりの高い成長を実現するため成長支援制度を設けています。そのなかにMBOと1on1が併用導入されています。MBO(目標による自己管理)は2007年より導入され、1on1の場で定期的な振り返りを行っています。

グリーでは最低月1回・原則30分を基本に、上長と1on1を実施しています。そこで自身が目指す姿と現在とのギャップを認識し、差を埋めるられるような仕事へのアサインにつなげるものです。上長に対するマネージャー研修も実施するなど、企業がバックアップを図っています。

グリーではMBOと1on1の併用により、組織・従業員の成長を実現すべく注力しています。

まとめ

1on1ミーティングは、上司と部下と1対1の対話を継続して実施していくことです。その方法は非常にシンプルでありながらも、状況によってはスケジュールの関係で実施頻度が少なくなってしまうケースもあるでしょう。

しかし、上司は意識的に部下との対話の時間をつくり、円滑な信頼関係の構築に努めることが、企業全体の発展にもつながります。