間違えてない?1on1を成功させるコーチング手法 | ティーチング・フィードバック

「1on1を実施しているのに効果が表れない」と悩んでいませんか。貴重な時間を使ってまで1on1をしているにもかかわらず結果を出せないと、1on1を中止したい気持ちになるのも無理はないでしょう。

もしかしたらあなたの1on1、もっといいやり方があるのかもしれません。1on1は価値のないシステムだと決めるつける前に、いくつかのポイントだけでも見直してみませんか。ちょっとしたことで改善できるかもしれませんよ。

【比較表】1on1の正しいやり方

「大人が成長する場面には法則がある」 部下を伸ばす、ヤフー人事直伝1on1の極意より、ヤフーの1on1ではコーチング・ティーチング・フィードバックが、次のように定義されています。「コーチングやティーチングとはなんだ」と疑問の方は、こちらの解説記事をチェックしてください。

コーチング ティーチング フィードバック
上司の働きかけ “引き出す” “教える” “伝える”
部下の目指す状態 気づきを得て、次の行動を決める 自分にない知識を得る 自分がどう見えているかを知る
求められるスキル 質問力、傾聴力、承認力 指導力 伝達力
ベーシックスキル 観察力

コーチングとティーチング、フィードバックはいずれも適切な使い方を施せば部下を効果的に教育できる反面、誤った用法で運用すると成長の妨げになりかねません。ではどのような使い方をすればよいのでしょうか。私が考えた利用すべき場面は次のとおりです。

コーチング ティーチング フィードバック
部下が答えを 知っている 知らない 知らない
部下が必要なスキルを 把握していない 把握している 把握していない

コーチングは部下が答え自体は知っているものの、今直近で使うべきスキルを把握していないときに利用したい手法です。ティーチングは部下が答えを知らないものの、どのようなスキルがあれば目的を達成できるかを知っている状況で利用すべき手法です。フィードバックは部下が答えを知らず、なおかつどのようなスキルを求められているのかを把握していない場面で有効です。

コーチングやティーチング、フィードバックはそれぞれ適切な使いかたがあることは把握できましたか。一言ではわかりにくい部分もあると思いますので、各手法にフォーカスして使い方を紹介します。

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コーチング “引き出す”

部下が考えられるか質問か

コーチングは引き出すことで解決を促す1on1の手法です。答えが部下の内側にあるものの本人がそれに気づいていない、あるいはいまここで使うべきスキルが何であるかを認識していないときに利用したいやり方です。

ポイントは部下が答えをすでに知っている点にあります。答えを知っているとは、部下が経験や知識から正しい答えを導けるはずなのに露頭に迷っている状態を指します。つまり部下が知らないことに対してコーチングをしても迷宮入りするだけで逆効果だと言えます。


上司の中には気づいてほしい考え方・引き出したい発想があるのに対し、部下はその思考法をまだ知りません。そのため上司が自分の考え方に向かってリードしようとしても、部下が追いついてくれません。部下が知らないものはどうしようもなく、上司と同じ考えにたどり着くのはほんとうに難しいでしょう。

仮に同じ考え方まで導けたとしても、部下は上司によって考え方を植え付けられたと考えかねません。なぜならば誘導の仕方に強引な面が残るからです。部下が知らないものを上司が認知させようとしたら、ティーチングに近い手法をとらなくては伝わりません。しかしティーチングは引き出すのではなく教えることがメインになるため、部下は考え方を押し付けられたと考えても無理はないでしょう。

コーチングは部下の内側から出てくる回答を大事にする手法です。上司の思い込みや考え方を押し付けず、部下の自由な発想で展開できるよう1on1を進めましょう。

ティーチング “教える”

部下の知らない情報か

ティーチングは教えることで解決を図る1on1の手法です。営業であれば資料の作成方法、システムエンジニアであれば開発環境など、知ることで解決するときにティーチングをします。部下が問題の解決策を知らず、かつ部下もそれを把握しているときに利用すると良いでしょう。

重要な点は部下がどのようにしても知りえない情報を教えるということです。部下があれこれ考えたり本で情報収集したりしても、わからないであろう内容はティーチングが効果的です。

ティーチングで注意すべきは、部下が自分で考えればわかることや調べれば知れる情報は教えるべきでないということです。絶対に教えてはならないかと言われればもちろんケースバイケースですが、部下が自分で成長できるよう促すためにはあれこれ教えすぎてはいけません。


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フィードバック “伝える”

部下が気づけるか

フィードバックは伝えることで部下に気づかせる手法です。フィードバックにおける”伝える”は、部下の知らない・気づいていない情報を伝えることが主です。

部下が想像もしていないことを指摘できると成長を促せます。部下はいままで考えていた視点を異なる方へ向けられるので、新たな考え方を手に入れられたり従来の考え方を適切に変化できたりします。「気づき」を与えることで部下の成長する余地を拡大するイメージです。


まず1つ目の「部下の気づいていることをあらためて伝える」です。フィードバックは部下の新たな気づきが得られるように実施します。しかし誤用例では部下が既知の情報をふたたび伝えています。上司は以前伝えたことが直っていなかったために指摘したと考えられますが、これは逆効果です。

もし部下が誤りを放置しているだけであればあらためて伝えるべきですが、解決に向かおうとしている途中で指摘され直しても部下は「そうですね」と同意することしかできません。もし繰り返し指摘する必要に迫られた場合はすでに対策を施しているのか、単に失念していただけなのかを明確にしましょう。「〇〇が直っていないけどこれは忘れていたのか。」のように質問するのもよいでしょう。

次に2つ目の「その場の思いつきで伝える」です。部下はフィードバックから成長のきっかけをつかみます。成長のためのフィードバックが上司のきまぐれにすぎないとなれば部下も黙ってはいません。思いつきを伝えるのは言語道断ですが、フィードバックするときにはどうしてその内容を伝えるのかを明らかにすると部下も納得します。

直接的に理由を示す必要はありません。コーチングを使って部下に理由を考えさせてもいいですし、ティーチングで明らかにするのもよいでしょう。いずれにしても何かしらのロジックをもって部下に伝えましょう。間違っても感情に任せてフィードバックすることはないように気をつけましょう。

1on1で気をつけたい3POINT

部下に委ねるコーチング

コーチングは部下が答えに気づいていないものの、部下自身で導ける状況にあるとき使用すべきだと解説しました。しかし上司は答えを知っている必要があるのでしょうか。元Googleの社員、ピョートルさんは1on1の会話について次のように解説しています。

信念や価値観により直結する会話では、

  • 「あなたは今どんな業務を担当していますか?」
  • 「あなたにとって今取り組んでいる仕事はどんな意味がありますか?」

どちらのほうが、部下により深い思考を促すでしょうか。後者ですね。こうした部下の人生を変えるかもしれない質問を、1on1ミーティングで繰り返し投げかけます。

引用 : Googleの「最高の上司」がチームの生産性を高めるためにしていること

引用の二択ではどちらも現在の業務についてコーチングしているものの、導き出される回答は大きく異なります。前者の質問は業務そのものに対して、業務の内容や遂行状況を確認します。眼の前の業務が効率的になされているのか、問題を抱えてないかをチェックするのに有効です。

それに対し後者は業務の背景について解説しています。直近の効率化を考える前者とは違い後者は業務をそもそも行う必要があるのか、あるとしたらよりよいやり方はないのかという意味でも質問しています。部下の信念や価値観を問い直す質問です。

さて「上司は答えを知っている必要があるのでしょうか。」という問いに立ち直ってみましょう。単刀直入にいえば不要です。引用のようなケースでは上司が答えを知っている状況はむしろおかしいと考えられます。部下がどのように考えているのかを上司・部下がお互いに見つめ直し、現状を確認するというのがコーチングの1つの形式です。むしろ1on1がうまい企業ほど上司は回答を知らない傾向にあります。それは部下が考えをもって行動しているからではないでしょうか。

ティーチングは説教ではない

1on1は部下の育成を促すという目的上、部下が自分で考え自分で計画し自分で成長するというのが好ましいです。そのため上司から教えるティーチングは多用されないのが1on1のあるべき姿です。しかし実際には1on1がティーチング主体となっているケースも多々ある模様です。

「うちの会社のなかには、1on1を「説教を食らう時間」だと思っているメンバーが少なからず、いるんです。上司に呼ばれて、説教を食らって、猛省する時間だと。(中略)」

(中略)

ある人事担当者の方が、こんなことを漏らしておりました。非常に印象的なひと言でしたので、そのあと、かなり議論が盛り上がったことを、明確に記憶しています。

引用 : 「1on1」とは「説教を食らう時間」ではない!?

背景にあるのは「上司が偉い。部下は上司の上に立つ人だ。」という考え方ではないでしょうか。確かに立場上、上司は部下より裁量の大きな仕事を任されることが多く、転職市場やそのほかでも上司のほうが価値の高い人間として判断されるでしょう。しかし市場価値の高い人間が発言すればそれが正解かといえばそうとも限りません。

部下のやり方・考え方を尊重しつつ成長を促せれば部下はおびえることもなく優秀な人材へと成長するでしょう。上司が教えるティーチング主体の1on1から、部下が気づいて行動できるコーチング主体の1on1へと転換できるかが1on1最初の壁だと言えます。

信念や興味関心を理解

部下を成長させる方法はいくつかありますが、いずれにおいても部下の考え方を重要視します。よく雑談は不要だという上司がいますがあれは正しいとは言えないでしょう。雑談にはいい雑談と悪い雑談があります。2人の関係を親密なものにできる雑談はいい雑談だと言えます。

雑談および次のようなコーチングは、部下の信念や興味関心を理解するのに役立ちます。部下のやり方を尊重する以上、考え方の把握は欠かせません。クックパッドのエンジニア、レオさんは次のように語ります。

ー「最近、試してみたい技術はありますか?」「最近、ひどいと思ったコードはありますか?」の意図を教えてください。

前者は、知的好奇心を保ち、継続的に学ぶことを促すための質問。エンジニアの世界では、いま仕事で使っている技術だけでは次のキャリアにはつながらない場合もあるためです。相手の興味関心を知り、ときには情報を共有しあいます。

(中略)

「最近、ひどいと思ったコードありますか?」の質問には、直接事業の改善につなげられる効果も期待できますが、実はその人のプライドを確認するための質問でもあります。相手が譲れないところなど、仕事に対するスタンスを知ることができるんです。
引用 : 週1回×15分でチーム変革!事業を成功に導くクックパッドの振り返り

どちらの質問も部下がどのように発想し発言しているのか、あるいは思考の背景にはなにがあるのかを浮かび上がらせています。時間の少なさや理解の難しさから部下の考え方をわかろうとしない上司は、長い目で見ると1on1の成果をあげにくいと言えます。なぜなら1on1の目的である部下の成長は部下が主体となって育まれるからです。信念や興味関心を無視したやり方では本人に合っていない分、成長に時間がかかるでしょう。

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1on1は上司の動きが重要

1on1は部下を成長させるための時間であり、それをサポートするためにコーチング・ティーチング・フィードバックが存在していることを解説しました。1on1は部下が自ら行動できるように働きかけるシステムではありますが、実は上司のほうが労力を費やすと思います。コーチングやティーチングを受ければいいだけの部下とは違い、部下がその場でした発言に対して間接的に成長に必要な発想を与える上司は、経験もスキルも必要とされるでしょう。大変だとは思いますが部下の成長のために1on1を最適化してはいかがでしょうか。

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この資料で分かること

  • 1on1の目的と活用方法
  • 1on1導入での失敗例
  • 1on1で取り扱うべき話題