営業職向けのスキルマップとは? スキルを可視化するための項目一覧を紹介

「売上が伸びない営業職社員に対して、どのように育成したら良いか悩んでいる」
「営業職社員がそれぞれどのような業務をどこまでできるのかがわからないため、何を教えればいいかわからない」

営業職の人材育成について、このようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、スキルマップの活用です。

そこでこの記事では、営業職の人材育成にスキルマップが有効な理由や、参考になるテンプレートと使い方のポイントを紹介します。

具体的なスキル項目の例も多く紹介していますので、スキルマップの作成にもきっと役に立ちますよ。

スキルマップが営業職社員の人材育成に有効な理由とは


営業職の人材育成にスキルマップの活用が有効な理由は、「全メンバーの持つ保有スキルや習熟度の一覧化」ができるからです。

営業職が成果をあげるために必要なスキルは、顧客との関係構築力、課題分析力、情報収集力、資料作成能力、プレゼンテーション能力、タイムマネジメント能力など、多岐にわたります。商品知識や業界に関する知識も必要ですし、顧客との接点が増える上で必要なセキュリティやコンプライアンスへの理解も重要です。

このように営業職は、必要なスキル・知識が多岐にわたります。そのため、上司が部下に何をどこまで指導したか、部下が独力で何をどこまでできるか、今後は何を伸ばしたら良いのか、部下にどの業務をどこまでフォローすると良いかが、上司も部下も把握しづらいのです。この「スキルの把握」が、営業職の人材育成における、大きな課題です。

そこで有効なのが、スキルマップの活用です。

スキルマップは社員の持つスキルを一覧表にし、一元化、可視化したものです。横軸(あるいは縦軸)に社員一人ひとりの名前が並び、もう一方の軸にはスキル項目が並びます。

このスキルマップを見れば、それぞれの営業職社員がどのようなスキルを持っているか、その習熟度はどの程度か、他の社員と比べての優劣などが、ひと目で理解できるのです。

スキルマップを有効活用することで、評価される社員と評価者、それぞれに次のような効果があります。

人物 主な効果
評価される人(部下) ・自分の得意、不得意がわかる
・今後どのようなスキルを伸ばせば良いかが分かる
・ライバルやロールモデルの評価値がわかることで、モチベーションアップにつながる
評価・育成する人(上司) ・スキルマップに沿って指導することで、部下と共通認識を持った状態でコミュニケーションが取れる
・人材育成の指針になる
・組織内の人員獲得・配置の参考になる

なおスキルマップを使った人材育成方法については、次の記事も参考にしてください。

営業向けスキルマップテンプレート2選


営業職向けのスキルマップを作る上では、以下が参考になります。

  • 職業能力評価シート
  • iCD(iコンピテンシ・ディクショナリ)

厚生労働省の「職業能力評価シート」はレベル・職能別に整理

厚生労働省は、企業の人材育成を目的に、「職業能力評価シート」を整理し公開しています。これは、職種ごとに必要とされるスキルと評価基準について定めた、エクセルで作られたシートです。

この「職業能力評価シート」は、人事や広報、経理といった事務系職種のみならず、警備業や外食産業、ホテル業といった、幅広い職種に対応しています。そしてもちろん営業職向けのシートも用意されています。

営業職向けの「職業能力評価シート」は、さらにその習熟度別に、レベル1~4に分かれています。レベル1は新入社員や営業未経験者向けの基本的なスキルが、レベル4はシニア・スペシャリストやシニア・マネジャーといったように、高度な営業職向けのスキルセットが定義されています。各シートのスキル項目を満たしながら、段階的に営業職としてスキルアップしていくような想定がなされているのです。

例えば「営業職 レベル1」の職業能力評価シートを見てみましょう。一部スキル項目(『職業能力評価シート』では『能力細目』という名称)を一部抜粋します。

能力ユニット スキル項目
ビジネス知識の習得 ビジネスや社会経済の一般動向の習得
会社の仕組みの理解
ビジネスマナーの習得
PCの基本操作 PCの基本操作
ワープロソフト、表計算ソフト等の活用
情報の検索・加工と整理
企業倫理とコンプライアンス 諸規程、諸ルールの順守
倫理的問題の解決
営業基礎 担当業務に関する作業方法・作業手順の検討
営業の推進
担当業務に関する創意工夫の推進
営業事務 担当業務に関する作業方法・作業手順の検討
営業事務の推進
担当業務に関する創意工夫の推進

【出典】職業能力評価シート 営業 レベル1/厚生労働省より作表

そしてそれぞれの評価項目に関し、以下の3段階で評価を行います。

【評価の基準】

  • ◯:一人でできている(下位者に教えることができるレベルを含む)
  • △:ほぼ一人でできている(一部、上位者・周囲の助けが必要なレベル)
  • ✕:できていない(常に上位者・周囲の助けが必要なレベル)

【出典】職業能力評価シート 営業 レベル1/厚生労働省より

このシートや評価項目を雛形にして、皆さまの会社にあわせて評価項目や基準、段階を調整すると効率的です。

IT職向けのiCDでは営業職向けのスキル項目も整備


IT関係の職種の人材育成を主目的とした「iCD(iコンピテンシ・ディクショナリ)」では、ITエンジニアをはじめとする職種のスキル項目がリストアップされています。

そしてこの中には、営業職のスキルマップにも転用できる、セールス・マーケティング職向けのスキル項目も用意されているのです。

iCDを参考に営業職向けのスキルマップを作るには、「スキルディクショナリ」を使います。以下のページから、スキルディクショナリをダウンロードしてください。iCDで定義されているスキルの一覧が手に入ります。

iCDオフィシャルサイト :: ダウンロード

ただしこのスキルの一覧を全て使うのではなく、営業職に必要なものを選びます。営業職(セールス)のスキル項目は、次の表のようになります。

スキル分類 スキル項目
(戦略) 市場機会の評価と選定 ビジネス環境分析手法
ビジネス戦略と目標・評価
業界動向把握の手法
経営管理システム
経営戦略手法
(戦略) 販売戦略 販売実行戦略手法
(戦略) 製品・サービス開発戦略 顧客環境分析手法
(戦略) システム戦略立案手法 システム化戦略手法
システム活用促進・評価
ソリューションビジネス
業務プロセス
現行システムの調査・分析手法
事業戦略の把握・分析の手法
情報システム戦略
戦略分析手法
(企画) システム企画立案手法 ソリューション提案手法
(企画) セールス事務管理手法 セールス交渉手法
経理事務手法
(実装) プロジェクトマネジメント手法 プロジェクト調達マネジメント
(利活用) サービスマネジメント 顧客関係マネジメント手法
(支援活動) リスクマネジメント手法 リスク管理手法
ビジネスインダストリ インダストリ知識
エンジニアリングシステム
ビジネスシステム
産業機器
民生機器
企業活動 経営・組織論
会計・財務
OR・IE
法規・基準・標準 労働関連・取引関連法規

【出典】スキルディクショナリ/iCDオフィシャルサイト :: ダウンロードより作表

これらについて、スキル習熟度を判定していきます。習熟度の評価基準はスキル項目やその種類によって異なりますが、例えば「システム化戦略手法」については次のように評価されます。

レベル 評価基準
レベル1 手法内容について講義などを受講し知っている/どんなものか知っている、言える/テキストで知っている
レベル2 当該手法で分析できる/メソドロジを指導下で使える
レベル3 課題に応じて手法の使い分けができる/現場にて手法を活用し結論を導いた事がある
レベル4 最適な手法を使いこなす/最適な手法を選択できる/手法を状況に応じて自在に駆使できる
レベル5 所属団体・組織内で貢献し認知されるレベルにある
レベル6 業界に貢献し認知されるレベルにある
レベル7 業界をリードし市場への影響力があるレベルにある

【出典】スキルディクショナリ/iCDオフィシャルサイト :: ダウンロードより作表

IT関連の営業職であればそのまま転用できます。また、それ以外の業界における営業職であれば、自社の業種に該当しそうな形で読み替えることで、スキル項目を整備し、スキルマップに落とし込んでいくことも可能でしょう。

営業職向けのスキルマップを作り、人材育成へ活用しよう


この記事では営業職向けのスキルマップに関し、その目的やスキル一覧の例、テンプレートとして使える参考資料を紹介しました。

営業職の人材育成は、企業の業績向上に直結します。そしてスキルマップの活用は、営業職の人材育成に有効です。

今回紹介した内容が、みなさまの会社の人材育成に役立てば幸いです。

資料ダウンロード

簡単スキルマップガイド
簡単スキルマップガイド

この資料で分かること

  • スキルマップ項目の基本
  • スキルマップのテンプレートと作成方法
  • スキルマップの注意点