ジョブ型雇用とは? わかりやすくメリットや問題点を解説します

ジョブ型雇用とはどのような雇用システムなのでしょうか?

この記事では、その仕組みや特徴、メリットやデメリット、メンバーシップ型雇用と比較しながらわかりやすく解説します。

ジョブ型雇用とは


ジョブ型雇用とは何でしょうか。

ジョブ型雇用とは「仕事に人をつける」こと

端的に説明すると、ジョブ型雇用とは「仕事に人をつけること」です。

そして「仕事に人をつける」とは、それぞれの職場において「やってほしい仕事」を洗い出し、「その仕事を担ってくれる人」を雇うことです。

ジョブ型雇用の例

例として、技術職の社員をジョブ型雇用により獲得するケースを紹介します。

ジョブ型雇用では、次のような手順で採用・配置を行います。

  • 会社を運営する上で必要な業務を定める
  • その業務の遂行に必要なスキル、キャリア要件を洗い出す
  • 要件を満たす人材のみ採用する
  • 優秀な人材を、同一職種内で昇進させていく

会社を運営する上で必要な業務を定める

担ってほしい職務の概要、具体的な職務内容を定義します。たとえば以下のような内容を定めていきます。

職務概要 技術職
具体的な職務内容 機械設備の管理、定期点検とメンテナンスの実施、故障時の原因調査と修理の実施、設備や業務の改善、報告書作成などの事務処理

なお、この定められた職務の概要、具体的な職務内容のことを、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」と呼びます。「ジョブディスクリプション(職務記述書)」の作成は、ジョブ型雇用の要(かなめ)です。

その業務の遂行に必要なスキル・キャリア要件を洗い出す

ジョブディスクリプションに基づき、その業務の遂行に必要と思われる人材像を定義します。

たとえば「当該技術職の経験が5年以上ある」「危険物取扱者の資格がある」などです。

要件を満たす人材のみ採用する

定めた要件を満たす人材のみを採用します。そのためジョブ型雇用は多くの場合、必然的に少数精鋭の採用となります。

優秀な人材を、同一職種内で昇進させていく

キャリアパスとしては、同一職種内でより高次な職責へとシフトしていく形になります。ジョブ型雇用では職種の変更は原則おきません。

たとえば技術職なら技術職の係長、課長補佐、課長、次長、部長・・・といった形で昇進していきます。技術職から営業職へ、といった配置転換は基本的に発生しません。

このように、

  • 「まず会社内で実施すべき仕事・業務を定め」
  • 「その仕事・業務を担える人材を探し」
  • 「同一職種内で昇進していく」

という雇用システムが「ジョブ型雇用」です。

「人に仕事をつける」メンバーシップ型雇用との違い

「仕事に人をつける」ジョブ型雇用と対照的な雇用システムがあります。それは「人に仕事をつける」メンバーシップ型雇用です。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用を比較することで、ジョブ型雇用がより理解しやすくなります。

「人に仕事をつける」とは、会社に入ってほしい人を定め、その後にその人に担ってほしい仕事をあてがうことを意味します。このメンバーシップ型雇用は、日本の新卒採用で一般的な雇用システムです。

ジョブ型雇用では主に「定義した業務を遂行できそうか」を見極め、人材を採用します。一方メンバーシップ型雇用では主に「社員(メンバー)としてふさわしいかどうか」を見極め、人材を採用します。

ジョブ型雇用では、採用時に配属はほぼ決まっています。一方メンバーシップ型雇用では、入社後に各部門へと配置していきます。メンバーシップ型雇用でも配属時には社員の適性や希望も考慮しますが、基本的に最も重視されるのは、課ごとの人員の数と年齢のバランスです。

ジョブ型雇用では、業務遂行に必要なスキルやキャリアを持った人材を採用します。そのため、配属後に即戦力としての活躍が期待できます。しかしメンバーシップ型雇用においては、各配属先での業務を遂行するために、研修やOJTなどで人材育成することが前提となります。

ジョブ型雇用では、たとえば技術職の係長から課長へと、同一職種内で昇格・昇進していきます。職種変更のともなう異動は基本的にありません。しかしメンバーシップ型雇用では、人員バランスの適正化を行うため、「技術職から営業職へ」といったような職種変更のともなう異動も大いにありえます。

ジョブ型雇用のメリット5点


企業側と従業員側に分けてメリットを解説します。

企業側のメリット3点

企業にとっては次の3点のようなメリットがあります。

  • スキルやキャリアを持った即戦力人材を採用しやすい
  • スペシャリスト人材を獲得・育成しやすい
  • 人材の流動性が高まり、組織の硬直化を避けられる

スキルやキャリアを持った即戦力人材を採用しやすい

ジョブ型雇用の大きな特徴は、配属後すぐに活躍してくれる即戦力人材を獲得しやすい点です。

ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションに基づき、「その職務が遂行できる人」を採用します。そのため配属された時点で、職務遂行に必要なスキルやキャリアは持ち合わせている可能性が高く、即戦力となることが期待できるのです。

スペシャリスト人材を獲得・育成しやすい

ジョブ型雇用では専門的で高いスキルを持った、スペシャリスト人材が獲得しやすくなります。また職種の変更は原則ありません。そのため年次を重ねるほど社員には経験が蓄積され、専門性も高まります。

人材の流動性が高まり、組織の硬直化を避けられる

ジョブ型雇用の組織では転職が促され、入社や退社が盛んになります。

人材の流動性が高まることは、日本においてはそれほど喜ばしくないことのように思われています。しかし「凝り固まった考えを排除できる」「外部からの新しい知見やノウハウが組織にもたらされる」「人間関係のマンネリ化を避けられる」などの様々なメリットがあるのです。

従業員側のメリット2点

従業員にとって、ジョブ型雇用には次のようなメリットがあります。

  • 専門性の高い特定の業務に注力できる
  • 給与体系に納得感が生まれやすい

専門性の高い特定の業務に注力できる

ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションに定められた業務にのみ集中できます。原則として、ジョブディスクリプションに記載のない業務は行う必要がありません。

そのため、専門的なスキルを磨きスペシャリストになりたい人にはうってつけの制度といえるでしょう。

給与体系に納得感が生まれやすい

メンバーシップ型雇用の評価制度は年功序列になりがちです。そのため「優秀だが勤続年数の短い人」よりも「優秀でないが勤続年数の長い人」のほうが高待遇になってしまうことも多々あります。そのような状況下では不公平感が募り、やる気も下がってしまうことでしょう。

しかしジョブ型雇用の評価制度では、勤続年数よりも担う責任や能力が重視されます。そのため納得感が生まれやすいのです。

ジョブ型雇用の問題点は


ジョブ型雇用を導入する上で理解すべきデメリットについて紹介します。

企業にとっての問題点

企業にとっては、大きく以下4点を考慮しなければなりません。

  • 一人あたりの採用コストが高い
  • 日本では該当職種の業務が減ったときに人員調整しづらい
  • スキマ業務をお願いできない
  • 組織的な一体感を生みづらい

一人あたりの採用コストが高い

ジョブ型雇用の場合、特定の要件を満たす希少な人材を探し、他社との人材獲得競争に勝つ必要があります。そのためメンバーシップ型雇用と比べ、一般的に一人あたりの採用にかかるコストが高くなりがちです。

実際にHRプロの調査によると、ジョブ型雇用を取り入れた企業のうち、41%が「採用コストが高くなる」と回答。なお「変わらない」「やや低くなる」と回答した企業はそれぞれ全体の55%及び4%でした。

【参考】ジョブ型雇用のメリット/デメリットとは。多面的な評価を行う日系企業と成果主義の外資系企業では意識に開きが|人事のプロを支援するHRプロ

このように、ジョブ型雇用は一人あたりの採用コストが割高になりがちです。

日本では該当職種の業務が減ったときに人員調整しづらい

ジョブ型雇用が一般的なアメリカでは、従業員を簡単に解雇できます。そのため、ビジネス戦略の変更や事業の縮小にともなう人員の整理が容易です。

一方日本では、従業員に大きな問題があるか、致命的な経営不振の場合にのみしか基本的に解雇できません。アメリカのように「ビジネスモデルが変わったから」「人材が不要になったから」という理由で人を解雇できないのです。

【参考】労働契約の終了に関するルール|厚生労働省

そのため、ジョブ型雇用では業務量が減った場合、解雇も他部署への異動もできず、余分な人員を抱えてしまう可能性があります。

スキマ業務をお願いできない

ジョブ型雇用では、ジョブディスクリプションに記載のない業務は基本的に行う必要がありません。しかし、企業においてはジョブディスクリプションに記載しづらい雑多な業務が発生することもあります。そのような「スキマ業務」をジョブ型雇用された人材には依頼しづらい、というデメリットもあります。

組織的な一体感を生みづらい

ジョブ型雇用の雇用システムでは転職が盛んになり、人材の流動性が高まります。組織の新陳代謝が促されるというメリットがありますが、一方で従業員の会社への帰属意識が薄まり、一体感が生まれにくいというデメリットも考慮すべきでしょう。

従業員にとっての問題点

ジョブ型雇用が一般的になることで、従業員側には次のような懸念点があります。

  • 仕事が見つかりづらくなる場合もある
  • 他の職種に変更しづらい
  • 降格が当たり前になる

仕事が見つかりづらくなる場合もある

希望する仕事のポストが少ない場合、ジョブ型雇用では職にあぶれてしまうリスクがあります。

たとえばポストが少ないため司書資格取得者が図書館に就職できない、博士号取得者が大学の研究職に就けない、といったニュースを聞いたことはありませんでしょうか。このように、ジョブ型雇用では自身の持つ専門的スキルやキャリアを活かせるポストが少ない場合、思うような仕事に就けないリスクがあります。

他の職種に変更しづらい

「新卒で営業職に就いたけれど、ひょっとしたら向いていないかもしれない……」
このように自身の適性について悩んだことはありませんでしょうか。

メンバーシップ型雇用では、職種の変更がともなう異動が行われます。また異動希望を出すこともできます。そのためメンバーシップ型雇用では同じ職場に所属しながら自身のキャリアをリセットし、新しい職種へと挑戦することができます。

一方、ジョブ型雇用では職種が固定されます。そのため定められた以外の業務を経験しづらいのです。仕事の選び方を一度間違えると、軌道修正がしづらくなる懸念があります。未経験の業種に就くには転職しなければなりませんが、これまで培ったスキルや経験が転用しづらいため、転職前と比べて給与が下がることも一般的です。

降格が当たり前になる

メンバーシップ型雇用ではめったにおきなかった降格が、ジョブ型雇用では当たり前になります。そのため期待よりも成果が出せなかった場合には降格もありえます。

ジョブ型雇用はメリット・デメリットを理解するのが大事


今回は、ジョブ型雇用とは何か、そのメリット・デメリットを紹介しました。

ジョブ型雇用の導入は組織内の風通しをよくし、専門性の高い人材を獲得・育成できるといった効果があります。しかし社員の待遇に大きく影響しますので、丁寧に導入しなければ組織内の反発にあい、失敗してしまうリスクもあります。

ジョブ型雇用のメリット・デメリットをしっかり理解した上で、従業員と丁寧なコミュニケーションを重ねることが重要です。