インセンティブ制度とは | 定義やメリット・デメリット、事例、設計方法について解説

インセンティブ画像

インセンティブ制度とはビジネスにおいて一定の条件を満たした社員に送られる報酬のことをいいます。このインセンティブ制度の効果、あなたは信用していますか。それとも疑っていますか。

ある研究によるとインセンティブ制度は有効であるとの結果が示されています。

ニューサウスウェールズ大学のリチャード・ホールデン経済学部教授が、アメリカの2都市で行った実験を下に「子どもの学習への動機付けとして金銭を報酬として与えるインセンティブは有効である」と主張しています。
「勉強したらお金を払う」という教育方法は有効であることが実験で示される

子供が対象者の中心である点、多方面に報酬を付与している点などはあるものの、インセンティブ制度が一定の効果を持っていることはわかるかと思います。

本記事ではそんなインセンティブ制度の定義や事例、メリット・デメリット、システム設計などについて解説します。インセンティブ制度がどのようなものか気になるあなたも、これから導入しようかと考えているあなたも必見です。

インセンティブとは

インセンティブは英語のincentiveに由来します。もともとは動機や(動き出すための)刺激という意味の英単語から生まれた単語です。

刺激、動機、誘因、奨励金、報奨物
Weblio英和・和英辞典

転じて日本語では「モチベーションを向上させるきっかけ」という文脈で使用されます。つまりインセンティブはなにかしらの行動が始まるように誘導することともいえます。

狭い意味では「特定の条件を達成した者に送られる報酬」という意味ももちます。ビジネスにおいてインセンティブと言われればほとんどの場合はこの意味で使用されます。営業がノルマ以上の売上を出したときにボーナスのように給料が上乗せされるのはこのインセンティブ制度によるものです。

モチベーションとは

さきほど触れたモチベーションの意味についても簡単に確認しておきましょう。

モチベーションも英語のmotivationに由来します。日本語でいうやる気とほとんど意味は変わりません。定義の仕方によってはモチベーションとやる気を区別することもありますが今回は等しいものだとして扱います。

動機(づけ)、刺激、やる気
Weblio英和・和英辞典

モチベーションとの違い

「インセンティブとモチベーションの違いはなんだろうか。」

と思ったかもしれません。確かに英語の意味から考えると両者はかなり似ており複雑です。しかし日本語のインセンティブとモチベーションでは意味が異なります。モチベーションはやる気そのものであるのに対し、インセンティブはやる気を出すためのものを指します。

学校の宿題を例に考えてみましょう。モチベーションは学校の宿題をやろうと思う気持ちで、インセンティブは宿題を完了したらできるサッカーやテレビゲームと同じです。モチベーションを生み出すためにインセンティブがあります。

インセンティブの必要性

インセンティブ制度がほんとうに必要なのか疑問を持っていませんか。確かにもとからモチベーションが高いのであればインセンティブは必要ありません。

しかし日本の企業で働いている社員は他の国と比べてモチベーションが低い傾向にあります。モチベーションの低さを示すデータを2つ見ていきましょう。

日本人は会社にマイナスイメージ

タワーズワトソンの「2014年グローバル労働力調査」によると、日本は社員のエンゲージメントが著しく低いそうです。エンゲージメントとは「社員の企業に対する関与の度合いと、仕事に対する感情的なつながり」をいいます。

エンゲージメントが高いと社員は企業に関心が高く仕事が好きであるとわかります。それに対しエンゲージメントが低いと企業に関心がなかったり悪いイメージをもったりしており、仕事へも後ろ向きになっていると考えられます。

以下の表は調査を実施した対象者における、エンゲージメントの高さを割合で示したものです。

高い ある程度高い 低い 非常に低い
日本 21% 11% 23% 45%
世界平均 40% 19% 19% 24%
アメリカ 39% 27% 14% 20%

世界平均やアメリカではエンゲージメントの高い社員は40%ほどいるのに対し、日本ではほぼ半分の21%しか存在しません。一方エンゲージメントが非常に低い社員は他の国と比べて日本は45%と突出して高いです。これに加え、次のような記述も見られます。

少なくとも過去8年間、日本はこの調査の対象国中最低スコアを記録し続けているという。その他エンゲージメントの調査を行っている会社も、似たような結果を示している。
実はモチベーションと生産性が低い日本人――理由はこれだ

つまりここしばらくの日本はエンゲージメントの低さが目立っているということです。会社や仕事に対して悪い印象を持っているすなわち仕事に対してモチベーションが湧いていないと考えられます。

日本人は仕事に熱意がない

もう一つの事例はアメリカのギャラップが世界各国の企業を対象に実施した調査です。こちらも従業員のエンゲージメントを測定したものです。細かい解説は後述のリンクを確認してもらうとして、結果だけ紹介します。

日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが分かった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。
企業内に諸問題を生む「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%に達した。
「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査

世界的に有名なギャラップにおいてなされた研究なのでデータの信頼性はかなり高いです。データをみると、日本人は仕事に対してモチベーションが低いと言わざるを得ないでしょう。

やる気がないのみならず周囲に悪影響を及ぼしかねない社員が24%もいることにも驚きです。これを考えると社員それぞれのモチベーションが低いのではなく、相互に関係しあい結果的に会社全体のモチベーションが下がっているとも考えられます。

これらのデータからインセンティブの必要性を理解してもらえれば幸いです。社員のモチベーションはあなたが想像している以上に低いと思われます。

インセンティブのメリット

モチベーションを改善するためにはインセンティブが有効です。しかしインセンティブを導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

インセンティブを導入すると社員・企業の双方にメリットがあります。社員はモチベーションが向上し、正当な評価を受けていると感じます。企業は社員同士が切磋琢磨してくれるので自ら成長してくれます。

モチベーション向上

社員はインセンティブによってモチベーションが向上します。今までの目標はノルマを達成することだけでしたが、インセンティブ制度が設計されることで独自の目標を立てて仕事に取り組めるようになります。

仕事が得意な社員はノルマ以上の目標を達成し上乗せの報酬を手にできますし、苦手な社員はノルマを達成できればよいので不平不満が出にくくなります。ノルマを超えた分はなにかしらの形で報酬となって返ってくるのでそれもモチベーションを上げる一つのきっかけとなります。

正当な評価を得られる

インセンティブによって正当な評価を得られるようになります。インセンティブがない状態では、目標を達成したか否かだけが判断材料なので、目標を大きく超えて努力してもその分は報われないことが大半です。

しかしインセンティブが付与されればノルマ以上の成果をあげた分だけ評価されます。そのためやればやるほど意味があり、仕事が得意な人はさらに上を目指す意味ができます。

切磋琢磨される

企業からすると社員同士が切磋琢磨してくれるので社員の能力上昇が見込めます。社員が成果の達成度を他の社員と比較するようになるので、より結果を出せるように努力します。

代わり映えのしない仕事に社員が飽きているとき、インセンティブは効果的に働きます。仕事内容は同じであってもどのようにすればより売上を増やせるか考え、能動的に働くからです。

インセンティブのデメリット

では反対にインセンティブによるデメリットは何があるのでしょうか。それは良くも悪くも仕事が競争になることです。社内が殺伐としてしまったり売上優先で行動してしまったり気をつけるべきことはいくつかあります。

目先の売上を求める

制度にもよりますがインセンティブは成果につながったものを数としてカウントします。そのため成果につなげることのみを考え行動する恐れがあります。

例えば営業担当が相手のニーズを考えずに商品を押し売りしてしまうケースです。売上の数値目標を立てている場合、どのような形で売り込んでも売れてしまえばそれは数値にカウントされます。しかしこうして営業した商品は解約率が高くなり結果として会社の利益につながりません。インセンティブの条件設定には十分気をつけましょう。

人によってはマイナス効果

インセンティブを設ければ一律にモチベーションが上がるかと言われるとそうとも限りません。他の社員と比較してモチベーションが上がるのであれば問題ないのですが、むしろ下がるタイプの社員もいます。

他の人が成果を上げているのに対し、自身が成果を上げられないことに嘆いていてはインセンティブの意味がありません。その場合、人との比較ではなく自身の目標を達成できるように持ちかけましょう。

数値目標がないと難しい

インセンティブは結果が数値的に表されるものでないと、達成したか否かの判断が難しくなります。営業やマーケティングのように定量的に目標を立てられる部署であれば問題ありませんが、開発のような定量的な仕事はどうしてもインセンティブを制度化しにくくなります。

定量的に目標を立てられない場合は、各期間の目標を達成できたら報酬を与えるようにしてもいいでしょう。インセンティブというよりボーナスに近い形になりますが、他の職種が報酬を得ているのに部署によって受け取れない現象が起きるよりよいでしょう。

インセンティブの設計

ではいざインセンティブはどのように設計すればよいのでしょうか。インセンティブは設計を失敗すると逆効果になりかねません。あなたの会社で抱えている問題がどうすれば解決できるのかを逆算して制度を設計しましょう。

制度の対象者

まず誰を制度の対象者にするか決めましょう。目標を改善するためには誰の行動が変わればいいのかを考えると、すんなり決められるかと思います。ここでは上司・部下、チーム・個人の判断軸に沿って考えます。

上司・部下

上司にインセンティブを与えるか部下にインセンティブを与えるかで効果はまるで変わります。もちろん両方に付与するのも選択肢の一つです。

上司を対象にすると部下に対してなにかしらの改善指示を出し、その達成度に対して報酬を付与します。部下に与える場合はそれぞれの成果に対して報酬を与えます。上司に与えれば部下も能力を向上できるかもしれませんが、上司が成果を煽る行動を取るかもしれません。

チーム・個人

チーム単位で目標を立てるか、個人で目標を立てるかの違いです。

チームの場合はお互いが励まし合うことを期待できますが揉めることも予想されます。個人で考えると自分のペースで進められますが、社員によってインセンティブに非積極的になることも考えられます。

付与の条件

どのようなときに報酬を付与するのか考えます。営業であれば売上金額、マーケティングであれば特定の行動を起こした人数が数値になるでしょう。

ただし条件の立て方には注意しましょう。単に売上金額だけで考えると押し売りした成果も数値にカウントされます。一定期間内に解約されたら無効にするなどなにかしら対策を考えるのがおすすめです。

付与する物

目標を達成したときの報酬も考えましょう。特定の人しか欲しがらない報酬では報酬の意味がありません。多くのひとが欲しがるものを設定しましょう。このようなものが一例にあります。

  • 金銭
  • ポイント
  • 粗品
  • 旅行

一番一般的なのが金銭です。基本給に追加して達成度合いによってインセンティブを付与するというのが多いでしょう。最近ではピアボーナスという制度を利用してポイントを付与するパターンも増えています。ポイントはあらかじめ設定しておいた景品と交換できます。

インセンティブを人事に用いた事例

リクルートキャリア

転職サイト「キャリコネ」などを運営するグローバルウェイの調査によると、転職業界の年収ランキングトップはリクルートキャリアだったそうです。そして注目はリクルートキャリアの社員によるコメントです。

 社員からは「インセンティブの回数が多い」「仕事の裁量が自分で決められるため、(給与は)パフォーマンス次第だ」など、営業職へのインセンティブの手厚さがうかがえる意見が目立った。
人材業界の平均年収ランキング、リクルートVS.マイナビの差は……

情報・通信業界においてはSAPジャパンが1位ですが、コメントもよく似ています。

 社員からは「営業の場合、年間目標の達成度合いに応じてインセンティブが支払われる。目標達成率が100%を超えるとインセンティブの支払い率が高くなる」「年俸制だが賞与が別途支給される」といった声が寄せられた。
「情報・通信業界の年収」ランキング 2位は日本マイクロソフト 1位は平均1000万円超え……

どちらも年収が高い会社という条件はあるものの、インセンティブに対しては一定の評価を得られているように見えます。年収が高い会社は必ずしも基本給が高い会社とは限りません。実力次第で稼げる金額が変わるのであればその報酬によって年収が増加する可能性は十分にありえます。

事例にあげた二者はいずれも優秀な社員が揃っているがために、インセンティブが成功している可能性はあります。しかし成果を十二分に出してもそれに対する報酬が少ないとしたら、優秀な社員は減るでしょう。

SBI証券

SBI証券ではユニークなインセンティブがあります。それは部長が独自の裁量でポイントを付与する「部長賞」です。

当社では、『部長賞』というものを定めています。これは、半期毎に部門長に対して上限を決めたポイント予算を設定し、各部門長の裁量にて自由にポイントを付与する評価基準や頻度等を定めてもらうといったものです。
モチベーション向上と意識改革に効果を発揮!

従来のインセンティブや他の制度と組み合わせてこの部長賞は運営されているようです。

インセンティブは数値や目標の達成・未達成を基準に判断するので平等である半面、成果につながらない行動は評価されにくい傾向にあります。部長賞は部長が独断でポイントを付与できるので、直接は成果につながらなくても会社の環境改善や同僚の支援など、会社全体の利益につながる行動であれば評価してもらえます。

定量的な目標に対して付与されるインセンティブとは異なり、使い方を間違えればいわゆる忖度になりかねません。しかしうまく利用できれば数値に表れない定性的な部分も評価できるいい制度です。

損保ジャパン

損保ジャパンは付与するものを変更することでインセンティブの運営を効果的にしました。

これまでは、ボールペンなどの記念品を贈っていたのですが、 『インセンティブ・ポイント』にしたことにより、社員が自由に好きなものと交換できるようになったため、 現場からも大変好評でした。
営業の稼働率が2倍に!日々の努力を評価することで業績向上

目標を達成したときに付与するものは慎重に決めなくてはなりません。企業規模が大きくなるにつれ目標達成を評価する制度が慣例的になり、社員としても特に喜びを感じないようになるのでしょう。

これではせっかくのインセンティブも意味をなしません。インセンティブは社員がほしいものであってはじめて意味があります。馬の前に吊るすのは人参だから馬は走りたくなります。インセンティブがうまくいかない場合は現金ではないなにかに変えてみるのもよいでしょう。

インセンティブを効果的に使う

インセンティブの必要性やメリット・デメリット、設計方法、事例などについて解説しました。

インセンティブは設計も運営も重要です。慎重に設計する必要はありますが運営している時点で改善点があればすぐに再設計しましょう。あなたの社員が何を欲しているかはあなたにしかわかりません。自分の社員はなにを欲しているのかを把握して、どんな制度を設計すべきなのか考えてみましょう。

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会場・日時・講師

会場
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住 所〒231-0063 横浜市中区花咲町2-82貞華ビル
最寄り駅:JR・市営地下鉄「桜木町」徒歩7分
日時
・08月29日(木)13:00~17:00
・09月26日(木)13:00~17:00
・10月24日(木)13:00~17:00
・11月21日(木)13:00~17:00

講師
新谷 永海香
株式会社シーグリーン 人事コンサルタント兼研修講師 経営情報学修士(MBA)
国内大手半導体メーカに入社。海外拡販プロジェクトメンバーとして、東南アジア、南米、など10数国の現地アプリケーション開発を行う、LSI設計エンジニア。帰国後は、新規市場への参入とサプライチェーン構築のため上京。携帯電話、RF-ID、ETCなど無線市場への新規参入を果たした功績として、3年連続社長賞「金賞」受賞。以降、外資系半導体商社にて、技術動向をベースとした「テクノロジーマーケティング」による製品企画・新市場参入に成功。日本法人発の社長賞「新規開拓賞」を受賞し、マーケティングスペシャリストへの転身を果たす。「女性のキャリア転職特集」による、テレビ出演、雑誌などのメディア掲載による反響後、ミッション型契約にて、創業期のベンチャー企業で戦略採用と組織設計を行う。結果、2年半で社員数5.7倍、売上高12.5倍を達成。今年度からは、株式会社シーグリーンにて人事コンサルタントに従事。自身でモチベーションが維持できる「自律型人材」の育成を目指し奮闘中。