スキルマップとは? メリット・目的設定の重要性・用途を解説

スキルマップとは、従業員のスキルを可視化するための一覧表です。人事評価や人材育成などのサポートするツールとして多くの企業に活用されています。使い方次第で従業員のスキルアップはもちろん、モチベーションを喚起する効果も期待できるでしょう。

今回は、スキルマップとはどのようなものなのか、わかりやすくまとめました。どのような目的で活用されているのか、メリットやデメリットなども交えて解説します。あらゆる人事業務・施策で活用できるツールです。いくつかの活用方法の事例も紹介しています。人事のお悩みや課題に照らしつつ、自社での活用の有効性を探ってみてください。

スキルマップとは?

スキルマップとは、個々の従業員のスキルを一目で把握できる一覧表です。大企業から中小・ベンチャー企業まで、企業規模を問わず、人事のあらゆる場面で役立てられています。

スキルマップ例
スキル項目 スキル詳細 Aさん Bさん Cさん
資料作成ソフトの活用 ワープロソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトを使用して、わかりやすい事務文書、表・グラフを取り入れた資料を作成できる。 4 2 3
スケジュール管理 適切にスケジュールを設定し、遅れが生じる可能性がある場合は、速やかに上司に報告・相談し、対応策を検討できる。 3 1 2
ビジネスマナー TPOに応じた言葉遣いや受け答えができる。 4 2 2
サービス知識 お客様に的確に対応するためのサービス知識の習得に継続的に取り組んでいる。 2 2 4

スキルマップの解説に入る前に、「スキル」の定義を再確認しておきましょう。日ごろから使う場面も多い言葉ではないでしょうか。一言でスキルといっても、意外に幅広い概念を含む言葉のようです。

スキルとは何か

スキルとは、何かを実行するために必要とされる能力を指します。脳に蓄積する知識だけでなく、遂行する技術や技能を伴うものです。学習やトレーニングによって身につくものであり、継続によって磨かれていくでしょう。技術的なものから、コミュニケーションやマネジメント能力まで業種・職種に応じたスキルがあります。

企業が活用するスキルマップでいうスキルは、その企業の業務に必要なものです。一つの職種をとっても複数のスキルが求められるでしょう。このとき、一般的にレベルが高いと認識されるスキルを盛り込めばいいというものではありません。

例えば、アパレルの販売職に、医療のスキル・資格は不要です。在庫数を確認し、正確に記録するスキルなど単純と思えるような作業でも棚卸し担当の仕事には求められるでしょう。スキルマップには、あくまで業務遂行に必要とされるスキルを盛り込みます。

人事評価や人員配置の判断にも役立てられるスキルマップですが、その判断には基準が必要です。基準が設定できていないと、評価する人によって判断の差が生じます。Aさんから見ると高スキルと思えても、Bさんから見た場合はまだまだ低いという判断もあり得るでしょう。スキル項目を基準として設定することで、従業員のスキルが正確に測れるようになるのです。

スキルマップの目的

スキルマップは、業界・業種、企業規模を問わず、多くの企業に活用されています。各社がスキルマップを用いる目的は、以下の2つの点に集約できるでしょう。

一つは、上記で説明したように従業員のスキルを把握するために可視化することです。複数人で構成される組織で、各人の得意/不得意が分かります。それによって業務の割り振りをすれば、より効率的な業務進行が可能となるでしょう。

もう一つは、組織に存在、あるいは潜在しているリスクを可視化することです。一覧にすることで、個人だけでなく、組織全体、あるいはチームにおけるスキルの過不足にも気付けます。評価や判断だけでなく、問題点や改善すべき点も見えてきやすいのです。

例えば、特定の従業員にスキルが偏ることも多いですが、そうなると負担の偏りも懸念されます。どれだけ得意な業務でも過剰な負担は避けなければなりません。過剰な業務を抱える従業員の不満や体調不良の種となり、離職に発展するのはよくあることです。低負荷の従業員のモチベーションの低下やスキルが伸びないなどの影響も出てくるでしょう。これらのリスクを把握し、改善のアクションを見つけ出すことに役立てられているのです。

目的設定の重要性・導入企業の目的

前の項目で、スキルマップが「スキル」と「リスク」を可視化するツールだということをお伝えしました。スキルマップを企業が活用する際には、さらに自社の活用目的を明確にしておくことをおすすめします。

人事だけでなく、管理職や現場業務に詳しい担当者たちなど、異なる役割や職種の人々も一緒に作り上げ、活用するスキルマップです。作成の工程で、自社が掲げる「スキルマップ活用の目的」が、のちにスキル項目選定の指針になります。目的が違うとスキルマップで挙げる項目も活用方法も変わってしまうのです。

例えば、自社の理念や方針を従業員に浸透させることを目的にすることもできます。その場合は、経営戦略や店舗コンセプトなどの内容をスキル項目にできるだけ反映させるのが効果的です。業務やサービスの質の向上、あるいは社内におけるスキルの標準化が目的という企業もあります。

その場合は、現場業務寄りの内容を、より詳細に記したスキル項目を挙げておいたほうがいいでしょう。スキルマップに挙げられる項目は、従業員が頻繁に目にするものですから意識喚起としても有効なのです。

このほか、どのような目的が考えられるか、いくつか例を挙げてみましょう。

  • 従業員スキルの底上げ
  • 従業員のモチベーションアップ
  • 社内スキルの過不足の調整(採用・育成)
  • 最適な人員配置
  • 業務効率化
  • 業務アウトプットの高品質化

自社にとって効果と意義のあるスキルマップを作成・活用するには、はじめの目的設定が重要な意味合いを持ちます。活用する全社員で共通認識を持っておきたい事項です。ぜひ、具体的なスキルマップ作成に入る前に、明確な目的を決めておきましょう。

スキルマップを導入する人事のメリット・デメリット

では、スキルマップを導入する人事にとってのメリットとデメリットを解説します。スキルマップは単なる一覧表ではありません。現代企業が抱えている人事関連のあらゆる問題・課題の解決の助けになるツールです。デメリットとなる点については、把握しておけば対策ができます。メリットは最大化、デメリットは最小化してスキルマップの精度を高めていきましょう。

メリット

人事にとってのスキルマップ導入のメリットとして以下が挙げられます。

人員配置の検討材料になる

適材適所の人員配置を実現するには、各従業員が持つスキルも重要な検討材料ではないでしょうか。各従業員の得意・不得意を理解できていれば、強みを活かす配置も容易になります。部署やチームの中で極端にスキルの過不足が出るような事態も防げるでしょう。スキルマップによる評価の内容を理解する従業員自身も、なぜその配属の辞令を受けたのかを知る材料になります。

効果的な人材育成ができる

スキルマップは各従業員に不足するスキルが一目で把握できるツールです。個々のスキルアップに必要な次のアクションが明確に見えてきます。

上司層にとっては、どのような働きかけやアドバイスが有効なのかが分かりやすくなるでしょう。個々の従業員にとっても、現時点を知り、次のステージに上がるために尽力すべきことが分かるはずです。やるべきことが明確になると行動するハードルはグッと下がります。

人事にとっては、組織全体でスキルの過不足も把握することも可能です。不足するスキルを社内に培うために実施する研修やトレーニングの内容を検討する際にも役立つでしょう。また、不足しているスキルが分かれば、そのスキルを持つ人材を採用するのも一つの方法です。つまり、採用すべき人材の条件を適切に見極めることにもスキルマップは参考になります。

公平な人事評価が可能

人事評価が人事と上司の間で閉鎖的に下されると、従業員はたとえそれが正当でも不満や不信感を抱きやすいです。その不満や不信感が転職意向のきっかけになることも少なくありません。そのため、評価の公平性と従業員の納得度を高めるべく、自社の人事評価の基準を全社員で共有する企業が増えました。

人事評価の基準とスキルマップのスキル項目を連動させれば、従業員が納得しやすい評価ができるでしょう。A上司、B上司、あるいは本人など、誰が評価しても同じ評価になるように作成することがポイントになります。

デメリット

スキルマップのデメリットは、はじめの作成に手間や時間がかかることです。目的を共有し、スキル項目を決め、評価方法やどこで活用していくかを決定する必要があります。スキル項目の選定が、スキルマップ導入の結果・成果を左右するといっても過言ではないでしょう。

人事だけで「自社業務」に求められるスキル項目を決めることは難しいものです。管理職など現場の詳細を知るメンバーの協力が必要ですし、評価や活用方法も全社員に浸透させなければなりません。一通りできたら、社内の一部で試行・検証してみることも大事です。このように、スキルマップは、本格的な導入までに手間と時間がかかる点は否めません。

ただ、メリットにも挙げたように、人事のあらゆる場面で有効に活用できます。定期的な更新でブラッシュアップしていく必要はありますが、2回目以降は初回ほどの労力を必要としません。スキルマップを導入した結果、人事業務が効率的、かつ的確になれば、管理職や各従業員にとってのメリットにもなるでしょう。

スキルマップのメリットについては、「スキルマップの作り方8ステップ|人材育成と人事業務の効率化ツール」の記事でも説明していますので参考にしてください。

幅広い用途に使えるスキルマップの活用事例

スキルマップは、企業のあらゆる場面で活用できるツールです。もちろん、スキルやリスクを可視化するツールなのですが、各社の取り入れ方はさまざまです。ここから、スキルマップがどのように使われているか、活用方法の事例をご紹介します。自社で導入する際のアイデアの種になれば幸いです。

目標設定時の資料

上司と部下で次期の個別目標を設定するときにも、スキルマップは良い資料となります。従業員の現時点のスキルとスキルレベルが把握でき、さらに次のステップには何が必要かも分かりやすいのです。

部下もアクションにも落とし込みやすく、管理職(上司)にとってもフォローやサポートすべき要素が分かるでしょう。お互いのニーズに対して、双方の行動が的確になります。これにより、スキルやパフォーマンスの向上だけでなく、円滑なコミュニケーションや信頼構築の効果も期待できるでしょう。

人事施策の検討や成果確認

スキルマップは、自社の従業員にもっとも必要な研修や勉強会、教育制度の内容を計画・立案する際にも役立ちます。社内、あるいは部署やチーム内で強化が必要なスキル項目が一目でわかるからです。客観的な資料ですから、上層部に立案する際の根拠として大きな役割を果たすでしょう。

研修の効果というのはすぐには出にくいですし、どのように計測すればいいか分からないという方も多いかもしれません。また、施策実施前と実施してから一定期間が過ぎたあとのスキルマップを比較すれば、施策の効果や成果も測れます。変更や改善のポイントが見えてくるかもしれません。やりっぱなしの研修ではなく、自社にとって実りのある研修を企画・実施するためにも有効なのです。

社内の業務検定試験との連動

従業員の業務スキルの確認や標準化に向けて、自社独自の試験を設けている企業も多いのではないでしょうか。業務に関わりの深い内容の試験であれば、試験の点数などをスキルマップの項目に含めてもいいかもしれません。スキルマップの評価で判明した社内の弱い部分を試験に盛り込んでいく方法もあります。その際、試験に合格するために提供するテキストや資料、講習会の内容に反映させておくと効果的です。

従業員の組み合わせ

業務で協働する従業員の組み合わせや、研修におけるペア・グループ割りをする際にもスキルマップの評価が参考になります。例えば、初級レベルの従業員と人に指導できるレベルに達している従業員を組ませるのも一つの方法です。未熟な従業員のスキルアップが見込めるだけでなく、熟練者に業務負担が偏ることも防げます。

また、各従業員の不得意な部分をお互いにカバーできる組み合わせにすれば、業務がより円滑にスピーディーに進むでしょう。一目で把握できるスキルマップがあれば、組み合わせを考えるのも容易、かつ的確になります。

まとめ

スキルマップとは、従業員のスキルと組織に潜在するリスクを可視化できるツールです。人事評価や人材育成、採用などの場面で活用されており、企業全体と人事部門の業務効率化にも役立ちます。

スキルマップの作成や活用の方法に決まった定義はありません。ご紹介した活用事例などを参考にしながら、ぜひ、自社にピッタリの取り入れ方を見つけてください。