意味ない1on1は実施しないで! よくある6つの失敗と9つの秘訣とは

上司と部下が1対1で定期的にミーティングをする「1on1ミーティング」。部下のキャリア形成や育成に有効な手段として注目されています。日本ではヤフーでの導入事例が有名ですよね。

しかしこの1on1ミーティング、やり方の本質を理解せず、形だけ導入してしまうと、うまくいかないどころか重大な悪影響が発生します。ズバリ言うと、意味ない1on1は実施しない方がマシなのです……!

それでは、有効な1on1ミーティングと、意味ない1on1を分けるポイントはどこにあるのでしょうか?

この記事では、意味のない1on1を実施するデメリットや、意味のない1on1になってしまうよくある失敗、効果的な1on1を実施するための秘訣を徹底解説します!

目次

意味のない1on1ミーティングで生じる「4つのデメリット」とは

有効でない方法で1on1ミーティングを実施すると、

  • 時間の無駄になる
  • 上司・部下間の溝が深まる
  • 部下の離職にもつながりうる
  • 現場社員からの人事への信頼も失う

というデメリットが発生します。

デメリット① 時間の無駄になる

意味ない1on1は、単純に考えても時間の無駄ですよね。

たとえば1人の上司につき部下が5人いたとします。そして、週に1回、30分の1on1ミーティングを実施したとすると、必要な工数は「部下の工数(5人×30分)+上司の工数(30分×5回)=300分」となります。

ミーティングだけで週に6時間、月に4週あるとすると、毎月24時間もの工数が必要となるのです。実際には日程の調整や連絡など、細々としたタスクも発生しますので、もっと時間がかかることでしょう。

上司1人、部下5人という人数だけでこれだけの工数がかかります。人数を増やせば増やすほど、1on1に必要な時間は膨れ上がります。

そして、企業において社員の工数はそのまま人件費に直結します。時間が無駄になるということは、会社にとってお金も無駄になるということなのです。

デメリット② 上司・部下間の溝が深まる

有効でない方法で1on1ミーティングを実施することは、単純に時間や人件費を無駄にしてしまうだけではありません。上司と部下の間の信頼をそこね、対立構造を生んでしまう可能性があるのです。

後ほど詳しく説明しますが、有効に機能していない1on1ミーティングでは、たとえば以下のような状態が見られます。

  • 自由になんでも相談できる雰囲気ではなく、拘束感がある
  • 上司が部下の話を遮断し、頭ごなしに「もっとこうしろ」と叱ってくる
  • これまでに1on1で話したことを忘れている
  • 有効な学びが得られず、実施する価値がない

部下は日々現場で忙しく働くなか、なんとか時間をつくり1on1ミーティングにのぞみます。その結果、上記のようなマイナスな体験をするのです。それも、定期的に……。1on1ミーティングを実施すればするほど、部下の上司に対する信頼が薄れていくのも、当然だとは思いませんか?

このように、無駄な1on1とは、上司と部下の間の信頼関係に傷をつけてしまうものなのです。

デメリット③ 部下の離職にもつながりうる

意味のない1on1ミーティングを実施し、上司への信頼が失われると、部下の離職願望が高まってしまいます。今の会社を辞めたくなったり、転職したくなったりする理由には、上司との人間関係が大きな影響を与えるからです。

リクナビNEXTの調査結果では、退職理由の本音には「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」が23%で1位。人材会社エン・ジャパンによる転職理由の本音の調査結果では、「上司と合わない」が2位となりました。

【出典】
転職理由と退職理由の本音ランキングBest10
転職理由の「本音と建前」ランキング、それぞれ1位だったのは……? – ITmedia ビジネスオンライン

このように、上司の振る舞いや人間関係は、部下の離職率に大きく影響します。近年は人口減少や産業の高度化に伴い、多くの日本企業が人手不足や採用難で苦しんでいる状況です。無駄に離職率を高めることは避けたいですよね。

デメリット④ 現場社員からの人事への信頼も失う

人事担当者の方ならおわかりでしょう。人事の実施した施策が徒労に終わると、現場からは、

  • 「忙しいのに、また無駄なことをさせて……」
  • 「人事は現場がわかっていない……」

などと、不満の声があがります。

失敗を恐れず挑戦することはとても大事です。しかし、そのたびに現場に負担がかかってしまうと、現場社員の信頼をそこねてしまいます。そして、ひとたび信頼をそこねてしまうと、以降の取り組みに、現場からの理解と協力が得られなくなります。どんなに有効な施策を打ち出したとしても、失敗する確率が上がってしまうことでしょう。

施策に失敗し、現場から信頼を失い、協力が得られず次の施策も失敗、さらに信頼を失う……。そんな恐ろしい悪循環に陥ってしまうかもしれません。

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意味のない1on1ミーティングに!? よくある「6つの失敗」とは


このように、有効でない方法で1on1を実施すると、企業全体に悪影響を及ぼしてしまいます。では、具体的にどのようなことをすると、1on1ミーティングは意味のないものとなってしまうのでしょうか。ここからは、よくある失敗例をチェックしていきましょう。

よく陥りがちな失敗には、次のようなものが挙げられます。

  • やる意義が現場に浸透しておらず、形骸化する
  • やり方が現場に丸投げ
  • 1on1で話す内容が定まっていない
  • コーチングではなくティーチングのみ
  • 忙しさにかまけ立ち消えに
  • やったらやりっぱなし

失敗① やる意義が現場に浸透しておらず、形骸化する

「なぜ1on1ミーティングを実施するのか?」その理由が現場に浸透していないと、1on1ミーティングが形骸化し、意味のないものとなってしまいます。

具体的には、1on1ミーティングを実施する上司が部下にこのようなことを言っていたら、1on1ミーティングの意義は現場に浸透していません。

  • 「とりあえず話せばいいから」
  • 「やれって上から言われたから」
  • 「やることになっているから」

失敗② やり方が現場に丸投げ

1on1ミーティングのレクチャーが不十分で、現場にやり方が丸投げになっているケースも散見されます。

1on1ミーティングは部下の状況にあわせた対応が求められるため、一般的にマニュアル化しづらいものではあります。しかし、だからといって、現場に対応を全てまかせ、放置していいものでもありません。あとで解説しますが、のぞましい1on1ミーティングの方法を理解してもらうために、研修を実施し、ガイドラインを整備する必要があるのです。

失敗③ 1on1で話す内容が定まっていない

1on1ミーティングで議論する内容がぼやけている、または話す内容が見つからない、という場合もあります。このような場合、以下のような声が上司からは挙がります。

  • 「なにを話せばいいのかわからない」
  • 「いつも世間話だけで終わる」

こちらも1on1ミーティングの研修やガイドラインの整備が不十分である場合に陥りがちです。

失敗④コーチングではなくティーチングのみ

コーチングとは相手のなかにあるものを引き出すようなコミュニケーションで、ティーチングとは相手にないものを教えるようなコミュニケーションのことです。そして、1on1ミーティングでは、コーチングとティーチングの、両方のコミュニケーションをバランスよく用いることが重要になります。

しかし、上司の方は経験豊富がゆえに、ついついティーチング的なコミュニケーションに偏りがち。ですがそれでは1on1ミーティングの目指すところである、部下が自分で考える力が伸びないばかりか、

  • 「自分の話を聴いてくれない」
  • 「頭ごなしに否定される」
  • 「考えが古く役に立たない」

というように、上司への不満が募ってしまう結果にもなりかねません。

失敗⑤ 忙しさにかまけ立ち消えに

現場で働く方は対外的な日々の業務に追われ、ついつい社内的なタスクは後回しにしがちなもの。たとえば、週報や月報の提出、評価の入力など、締め切り直前に提出する人や、締め切りを超えても出さない人、どの会社にもいますよね?

同様に、1on1ミーティングも後回しにされがちです。上司も部下も忙しく、後回しにされ続けると、いつの間にか立ち消えになる……。そんな状況もよく見られます。

失敗⑥ やったらやりっぱなし

1on1ミーティングを実施するものの、話した内容が次回に活かされないケースも。やはり部下からの信頼をそこねてしまう可能性があります。具体的には、上司が部下に「前はなにを話したっけ?」と聞くような状態が続くとキケンです。

効果のある1on1ミーティングにするための「9つの秘訣」とは?


では、このような失敗を避け、効果的な1on1ミーティングを実施するためには、どうすればよいのでしょうか? 9つの「成功の秘訣」を紹介します!

  • 経営者が1on1ミーティング導入の重要性を語れるようにする
  • 経営者からのメッセージを定期的に発信する
  • 部下の数を10人以内に抑える
  • ガイドラインを整える
  • 上司対象の1on1研修を実施する
  • 現場に丸投げではなく、全社的なサポート体制を整備する
  • 管理ツールなどで記録してもらう
  • 日程があわない場合は必ずリスケジュールしてもらう
  • 人事が1on1の実施状況を定期的にチェックし改善する

秘訣① 経営者が1on1ミーティング導入の重要性を語れるようにする

1on1ミーティングが企業経営において重要な施策であること。そのことを従業員一人ひとりがしっかり理解する必要があります。そのためには何よりもまず、経営者がなぜ1on1ミーティングが重要なのかを、自身の言葉で従業員に伝えられることが重要です。

組織開発で有名な立教大学経営学部の中原淳教授も、自身のブログでこのように語っています。

組織の定着という意味で、他のどれよりも一番大切なのは、僕は、冒頭の1で述べた「経営者が、1on1を自社の経営課題に紐付けて語れるかどうか」であろうと思います。より具体的には、事業・経営に紐付けて、1on1を導入する意味を語れるか、どうか、それが管理職に伝わるかどうか、だと思うのです。

【出典】1on1を組織に定着させるための5つのポイント:1on1をただちに形骸化させる「呪いの言葉」を口にしていませんか? | 立教大学 経営学部 中原淳研究室 – 大人の学びを科学する | NAKAHARA-LAB.net

「なぜ1on1ミーティングなのか?」この理由に経営者が答えられなければ、従業員に1on1ミーティングを浸透させるのは難しいかもしれません。

秘訣② 経営者からのメッセージを定期的に発信する

経営者からのメッセージは、一度伝えたら終わり、というものではありません。1on1ミーティングの重要性を浸透させるために、繰り返し何度も、従業員に対して発信する必要があります。

具体的には、以下のような発信方法があります。

  • 会社の経営戦略に盛り込む
  • 代表からのメッセージ動画をつくり社内に配信する
  • 社内のコミュニケーションツールやグループウェアにメッセージを掲示する
  • 全社でのミーティングや朝礼などで頻繁に取り上げる

秘訣③ 部下の数を10人以内に抑える

一般的に、有効な1on1ミーティングを実施するためには、管理する部下の数を10人以下に抑えることが重要と言われています。その理由は、動向を把握できる人数に限界があり、また管理職が1on1に費やす時間が多くなり他の業務に大きな支障が出るからです。

今の組織図を確認し、適正人数に収まっているかチェックしてください。もしも管理する部下の数が10人を大きく超える部署があれば、組織構造を変更するか、1on1ミーティングを実施するためのリーダーを設置し、負荷を分散しましょう。

【参考】ヤフーも実践する人材育成法「1on1」で成果を出せない組織の問題 | 人事で読み解く最強企業の秘密 | ダイヤモンド・オンライン

秘訣④ ガイドラインを整える

1on1ミーティングは前述の通り、部下の状況にあわせて上司が臨機応変に対応する必要が求められます。そのため、手順通り行えばよい「マニュアル」ではなく、なにが行動としてのぞましいかを示す「ガイドライン」を整備する必要があるのです。

ガイドラインには、たとえば以下のような内容を盛り込むとよいでしょう。

  • 1on1を実施する上での基本的な考え方とは
  • 1on1ミーティングの前に準備すべきことはなにか
  • どのようなテーマやアジェンダで話をすればいいか
  • どのようなコミュニケーションがのぞましいのか

実際の例としては、ナイル株式会社が公開しているガイドラインが参考になりますよ。

【ナイルの組織】マネージャー向けに1on1の社内ガイドラインを作りましたので公開します | ナイルのかだん

秘訣⑤ 上司対象の1on1研修を実施する

ガイドラインの整備だけではなく、1on1ミーティングを実施する管理職向けの研修も実施しましょう。具体的には、以下のような内容を盛り込みます。

  • 自社において1on1ミーティングがなぜ重要なのか
  • ティーチングとコーチングの違いとは
  • 振り返りの実施の仕方
  • 行動計画の立て方
  • よくあるQ&Aとケーススタディ
  • 模擬練習、ロールプレイング

秘訣⑥ 現場に丸投げではなく、全社的なサポート体制を整備する

研修を実施したらあとは現場におまかせ、というわけにはいきません。上司が滞りなく充実した1on1が実施できるよう、全社的なサポート体制も整備する必要があります。

具体的には、以下のようなサポートが考えられます。

  • 1on1に関する問い合わせ窓口や担当者の情報も上司に伝える
  • 1on1に関するよくある質問と回答を共有する
  • 研修や座談会を定期的に開催する
  • スケジューリングや面談の記録に便利なツールを導入する
  • 必要に応じて外部のコンサルタントや研修講師も活用しレベルアップを図る

秘訣⑦ 管理ツールなどで記録してもらう

1on1ミーティングで話した内容は、しっかりと管理ツールなどで記録するようにしましょう。話した内容を記録することで、次回以降のミーティングの参考にすることや、部下の変化を追うことが可能になります。

具体的な方法としては、エクセルでシートを作成し記録してもよいですが、データが増えてくると管理しきれなくなることも。本腰を入れてのぞむなら、専用の管理ツールの利用がオススメです。

秘訣⑧ 日程があわない場合は必ずリスケジュールしてもらう

緊急の用事やトラブルなどが発生すると、どうしても予定していた1on1ミーティングをキャンセルしなければならない場合があるでしょう。

その場合は、必ず別の日程を調整してもらうよう、上司の方に徹底してください。

別の日程を決めず流してしまうと、「やらなくていいんだ」という認識を現場社員に与えてしまいます。

秘訣⑨ 人事が1on1の実施状況を定期的にチェックし改善する

1on1ミーティングが着実に実行されているか、人事側も定期的に観察する必要があります。具体的には、大きく以下のような点を確認し、問題があれば対処しましょう。

  • 1on1ミーティングの回数は推奨通りとなっているか
  • 話されている内容は適正か
  • 上司や部下にどのような変化があったか

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この記事では、意味のない1on1ミーティングの弊害や、陥りやすい失敗、成功の秘訣について解説しました。

1on1ミーティングは適切に実施しないと効果が出ないばかりか、悪影響を及ぼすリスクもあります。一方、適切に運用すれば、従業員のエンゲージメント向上や部下の成長促進など、様々なメリットが得られます。

そして、1on1ミーティングのメリットを受けるのは部下だけではありません。上司のマネジメントスキルも磨かれます。結果として、組織全体の風土を大きく変えることも可能なのです。

効果的な1on1ミーティングを実施するために、この記事が参考になれば幸いです。

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