1on1 ヤフー流のやり方 – 頻度と観察 | コーチングやティーチング、フィードバックの概要

ヤフーは2002年から2011年まで常に増益を続けてきました。しかし2012年のネット業界では、スマートフォンの流行という激震が走ります。ネットはパソコンで閲覧するものという概念が崩壊し、ネット業界はスマートフォンへの対応を迫られました。激動の2012年にヤフーの実施した施策が1on1でした。1on1は6,000人を超える大所帯になった今でも続けられている、ヤフーにおける重要な人事施策です。

本記事では、ヤフーの業績を大きく伸ばすのに貢献した1on1の秘訣を紹介します。ヤフーの1on1は本として出版されるほど内容が濃く、簡単に議論できるものではありませんが、その中でも「コミュニケーションは頻度である」「『観察』と『フィードバック』」の2点に焦点をおいて解説します。

1on1とは

1on1とは、1on1ミーティングの略で1対1にて行われる会議・話し合いを指します。上司と部下の2人で行われる場合が多く、部下の業務進捗を確認したり、仕事への取り組み方に対して改善を提案したりします。

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1on1の悩み

1on1を実施するにあたって悩みを抱えている方は少なくありません。1on1が近年生まれた様式ということもあり、まだ慣れていない方も散見されます。では悩みにはどのような種類があるのでしょうか。悩みの種類によって対策すべきポイントが変わるので、自分がなぜ悩んでいるのかは的確に把握しておきましょう。

意義がわからない

「上層部から1on1をするように言われたが、正直なぜ必要なのかがわからない。」
「1on1が良いという話は聞くものの、なぜ良いのかが疑問だ。」

このような方は多いでしょう。1on1は最近なにかと話題になるものの、言葉尻だけを捉えていては目的のないミーティングとなりかねません。1on1の目的は、端的に言えば「部下の成長」です。しかしやり方を押さえなくては成長を促せません。

評価に時間がかかる

「1on1は人事評価の際に実施しているものの、時間がかかって迷惑だ」と感じている方がいるかもしれません。確かに評定に向けた1on1も存在はしますが、今回解説するのは部下を成長させるための1on1です。仮に評定のための1on1だとしてもやり方次第では、成長を促せるので適切なハウツーを確認しておきましょう。

部下の状況をつかめない

「1on1を実施しているが、部下の様子がいまいち把握できない」とお悩みの方もいるでしょう。様子を把握できない要因は、部下が発信してくれない場合と上司が認識しそこねている場合に分けられます。いずれにしても、部下の様子を観察する方法や1on1の頻度が関係していると考えられます。

部下が成長しない

「1on1にてフィードバックはしているが、部下が成長してくれない」という問題はよく見かけられます。原因はいくつも考えられますが、いずれにしても部下の様子を把握し部下が主体となって行動を起こすように促す必要があります。コーチングやティーチング、フィードバックを混合させていないか今一度確認しましょう。

ヤフーの1on1 – コミュニケーションは頻度

よっていずれの悩みにおいても、ヤフーの1on1を参考にする意義があると考えられます。ではどのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。ヤフーの小金蔵人氏によると、1on1以外の場も含めコミュニケーションの頻度が大事であるといった旨を述べています。

1つ目は「コミュニケーションは頻度」というキーワードがヤフーで語られています。1on1を導入した人事の責任者もよく言う言葉です。コミュニケーションは、人間関係を構築するための対話を中心とした(もので)、ノンバーバルも含めます。
「脱皮しない蛇は死ぬ」第二の創業を機に、ヤフーが1on1を徹底し続ける理由より

なぜ頻度が重要なのでしょうか。質の高い1on1を実施できれば十分でないのでしょうか。

半年の飲み会より週一の1on1

1on1は質よりも量が重要であるというのは、小金氏に限定された考え方ではなくヤフーの人事に共通する考え方です。長時間の話し合いを半年スパンで実施するよりも、短時間の話し合いを月1回、週1回の頻度で行ったほうが効果を得やすいということです。

頻度が重要な理由

なぜこれほどまでに頻度を追い求めるのでしょうか。その理由は大きく2つあるように見られます。1つ目はコミュニケーションそのものが高頻度でないと成立しないためです。2つ目は部下の問題をすばやく改善できるためです。

1on1はコミュニケーション

1on1は部下を成長させる方法の1つであるとともに、コミュニケーションの1つでもあります。1on1は会話でやり取りする以上コミュニケーションが円滑でなければ部下の成長を促せないどころが、上司と部下の関係性を悪化させかねません。1on1は部下を成長させるための「ツール」と捉えるのではなく、会話をとおして部下が自ら成長できる「コミュニケーション」と捉えた方がわかりやすいかもしれません。

そしてコミュニケーションは1on1の場でしかなされないわけではありません。あいさつやランチ・休憩時間の会話などこれらすべてがコミュニケーションです。上司は1on1で特別なコミュニケーションをしなくてはならないと焦るかもしれませんが、コミュニケーション自体は日常の延長線上です。1on1以前のコミュニケーションを有意義にすることで1on1も実りあるものとなるでしょう。

改善のサイクルを高速化

頻度を重要視するもう1つの理由が、部下の成長速度を加速させるためです。すなわち、改善のサイクル(いわゆるPDCAサイクル)を高速で回転させためとも換言できます。

半年に1度の頻度で1on1を実施する場合、反省の機会も半年に1度のみ設けられます。一方、週に1度のペースで1on1がなされれば改善の頻度も1週間ごとに訪れます。部下が誤りを正すまでの期間が半年ごとのときと1週間ごとのとき、成長を加速させられるのはもちろん後者です。

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ヤフーの1on1 – 「観察」と「フィードバック」

1on1の頻度と並んで重要なのが、1on1のやり方です。1on1はコミュニケーションを図るという点において他の恒常的なやりとりと変わりありませんが、1on1に必要なコミュニケーションの方法は存在します。1on1に欠かせないコミュニケーションの考え方が「観察」と「フィードバック」です。

2点目が「観察」と「フィードバック」です。これも何回か出てきたキーワードですけど、これが1on1のなかに込めている重要なキーワードです。観察はちゃんと見るということです。フィードバックは率直に伝えるということです。
「脱皮しない蛇は死ぬ」第二の創業を機に、ヤフーが1on1を徹底し続ける理由より

「観察」と「フィードバック」を考えるにあたり、重要なのが「コーチング」「ティーチング」「フィードバック」というコミュニケーションです。コーチングとティーチング、そしてフィードバックの概要を見ていきましょう。

コーチング・ティーチング・フィードバック

コーチングとティーチング、フィードバックとは、上司が1on1をするときに身に着けておきたいスキルです。コーチング・ティーチング・フィードバックの3種類を習得していると、部下の成長を促進できます。「観察」と「フィードバック」、特に「観察」はコーチング・ティーチング・フィードバックで共通して必要な考え方です。

しかしコーチングやティーチング、フィードバックとはなんでしょうか。まずはそれぞれの概要を解説します。

コーチングとは

コーチングは、相手から気づきを引き出す行為です。相手が自分で思考を重ねることにより回答へたどり着けるよう支援します。コーチングはティーチングやフィードバックとは異なり、こちらからは何も伝えません。相手の内側から湧いてくるものを大切にします。

コーチングで気をつけるべき点は、ティーチングやフィードバックにしてはいけない点です。ティーチングやフィードバックはこちらの情報を相手に渡すものですが、それでは相手が主体的に考え生み出した答えとは言えません。コーチングをするからには、相手が自力で回答を導き出す手助けのみに尽力する必要があります。

ティーチングとは

ティーチングは、自分の知っている知識を相手に教える行為を指します。コーチングは相手が自ら考えるように努めますが、ティーチングはこちらの知っている情報を単に伝えるにとどまります。

ティーチングはこちらの中にある回答を相手に伝えるだけで完了するので、1番簡単に習得できるスキルかと思います。しかしティーチング中心の1on1は、こちらのやり方を相手に押し付けることになりかねません。1on1か否かに関係なく部下が自分で考える能力を身につけるためには、ティーチングを減らしコーチングを増やすことが不可欠です。

フィードバックとは

フィードバックは、こちらから見える相手の姿を伝える行為です。ジョハリの窓にあるよう、人間には相手からは見えて自分には見えない面が存在します。フィードバックでは相手の認識していない面も含め内容を伝え気づかせるのが重要な責務です。

フィードバックはタイミングに気をつけましょう。落ち込んでいるときには元気づけるフィードバックを、調子づいて浮かれているときは改善のためのフィードバックをするなど、伝える内容を吟味できるとワンラック上の1on1へ近づけます。

「観察」と「フィードバック」が重用な理由

コーチングやティーチング、フィードバックは1on1を実施するうえで必要な思考法であると同時に、的確なやりかたを押さえないと効果が半減するコミュニケーションでもあります。コーチング・ティーチング・フィードバックを最大限に活かすために重要なのが、「観察」と「フィードバック」です。

観察は相手の様子を把握すること、フィードバックは相手の姿を伝えることです。観察をコーチング・ティーチング・フィードバック、特にフィードバックの実施時に意識すれば1on1が有意義な時間に変わります

コーチングの場合

コーチングにおいて観察が必要な理由は、部下に気づかせる事柄が観察によって変化するためです。コーチングの内容は、相手が課題をどのように考えているかどれほど深く考えられているかによって変わります。結論の一歩手前まで来ているのか、考えている最中なのか、入り口にも立っていないのか。状況においてコーチングの内容を決定します。

状況を把握するには観察が欠かせません。そして観察は1on1以外の場でも実践できます。あいさつやちょっとした世間話の際にも観察は可能です。考え方の癖や抱えている課題感をあらかじめ把握しておくことで、1on1におけるコーチングもスムーズに進みます。どのような質問をすればよいのか何を考えさせればよいのかの判断は、1on1の外から始まっていると言えるでしょう。

ティーチングの場合

ティーチングをする際、観察が十分にできていれば必要十分の情報を相手に教えられます。ティーチングは簡単にできる反面、相手の自主性を損なうリスクがあります。ティーチングを必要最低限に押さえるためには観察することが求められます。

過度にティーチングしてしまうのは相手に必要な情報を把握していないためです。相手を観察し真に教えるべき情報を把握していれば、相手の思考を妨げない程度のティーチングを実行できます。

フィードバックの場合

観察とフィードバックには密接な関係があります。フィードバックは観察があって初めて成り立つからです。フィードバックは相手の様子を観察し気づいたことを伝えるため、観察がないとフィードバックもできません。

観察とフィードバックの間で重要なのが、観察した内容を装飾しないことです。観察した内容を相手のことを思って、変化させてしまったり主語を大きくしてしまったりしては、フィードバックの意味が薄れてしまいます。「私は〇〇だと思った。」のように自身の感じたことをストレートに伝えましょう。情報が加工されていないことで、相手は生に近い情報を考察に反映できます。

1on1の事例【新発想】

ヤフーが2012年から続けてきた1on1のノウハウを紹介しました。しかし1on1を有効活用している企業はヤフーだけではありません。ヤフーの1on1は効果的な手法ではありますが一手法に過ぎません。以下ではヤフー以外の1on1を活用している企業のうち、少し変わった取り組みや心に留めておきたい考え方をまとめました。

上司・部下以外の1on1

1on1の形式で多いのが「同じチームの上司から部下に対して1on1をする」のだと思います。しかし、必ずしも直属の上司と部下の間で1on1をする必要はないというのが今回の事例です。

「チームを交差して行なう1on1」と「利害関係のない社外の人と行なう1on1」を実施してみることにしたのです。(中略)また、1on1には「逆指名制」も取り入れており、メンバーに誰と1on1をしたいかアンケートをとって、3カ月ごとに組み合わせをチェンジしています。
青森-宮城-東京-静岡を繋ぐ。多拠点間1on1で実現したチームワーク向上より

「チームを交差して行う1on1」は業務をしているうえでなかなか関わりを持たない人との1on1、「利害関係のない社外の人と行なう1on1」とは外部のコーチやアドバイザーと行う1on1、「逆指名制」による1on1は部下が相手を選ぶ1on1です。

1on1の目的は部下の成長にあるため、成長さえできればどのような関係の人が1on1を実施してもよいという発想はそのとおりだと言えます。業務にて関わりの少ない人同士で1on1をすれば新たな視点を手に入れられる他、近い関係の人とは話しにくい内容も相談できるのがメリットです。

部下からの提案もあり

さきほどから1on1は、部下を成長させるための施策であると繰り返していますが、成長のみに執着する必要はありません。部下の成長はもちろん重要ですが、会社の成長を考えてくれる部下の意見は取り逃がさないようにしましょう。

コミュニケーションが取れているようで取れていなかったり、知っているようで知らなかったり。そのズレが会社のネガティブな側面に直結してしまうのではないかと危機感をもちました。
そこで、みんなに要望や願望を聞こうと思ったんです。
どういう仕事をしたいとか、プライベートな悩みとか、なんでも話してもらい、それを会社全体で考えていけるようにするというシステムが 『 1on1 』です」
心理的安全性が個々の才能を開花させる “優しい文化”が根付いた理由より

上司から部下への働きかけに専念しなくてもかまいません。コーチングが1on1の大部分の時間を占める以上、部下から提案を受けることもあるでしょう。その場合は提案を真摯に受け止め反映させられないか検討しましょう。部下は提案が反映されると自身の行動に自信を持ちます。上司とのコミュニケーションも円滑になるでしょう。

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1on1を適切な方法で効果的に運用

ヤフーが重要視している1on1のポイントを解説しました。

コミュニケーションの頻度を増やすことは、日々の機微を1on1に反映させることや振り返りのスパンを短くすることに効果があります。週に30分も時間を費やせば上司の工数が増えてしまうことは必至ですが、長期的に考えれば部下が成長し上司の負担を軽減できます。

1on1は部下を観察してはじめて成長を促せます。どのような課題を解決することで部下が成長できるのかを的確に把握し、1on1を有意義なものにしましょう。きっと1on1の最中に限らずコミュニケーションが円滑になるはずです。

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この資料で分かること

  • 1on1の目的と活用方法
  • 1on1導入での失敗例
  • 1on1で取り扱うべき話題